制作年・国 | 2014年 日本 |
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上映時間 | 2時間4分 |
原作 | 三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』文藝春秋刊 |
監督 | 大森立嗣 |
出演 | 瑛太、松田龍平、高良健吾、真木よう子、本条まなみ、奈良岡朋子、新井浩文、麿赤兒、松尾スズキ、大森南朗、岸部一徳、永瀬正敏他 |
公開日、上映劇場 | 2014年10月18日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、シネ・リーブル梅田、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条他全国ロードショー |
~大人のゆるさに滲む人情。深化した『まほろ駅前』ワールド~
いい男とはただ単にかっこいいだけではなく、それまで生きてきた人生の味わいが佇まいに現れるものだ。せめて40歳を過ぎなければ、私が思う「いい男」の域には達しないだろうと勝手に思っていたが、瑛太と松田龍平が演じるまほろ駅前便利屋コンビにはすっかりやられてしまった。ちょっと訳あり、三十路の二人が醸し出す雰囲気は、昭和枯れすすきのような侘しさや、滑稽さを感じさせる。個性的な町の住人たちも勢ぞろいし、ゆるいはずの二人が思わぬ事件に巻き込まれるのはお決まりの展開だが、今回は今まで謎に包まれていた行天の過去や心の傷にも肉薄。行天が子ども嫌いである訳も明らかになっていく。映画やドラマを経たからこそ、さらに深まった『まほろ駅前』ワールド。共演者も含めて、彼らが生きてきた過去も浮かび上がるような描写が、賑やかな中にもしんみりとした味わいを呼ぶ。
バツイチの多田(瑛太)と、中学時代の同級生、行天(松田龍平)は、共同生活しながら、様々な依頼を解決する便利屋稼業を営んでいる。ある日、凪子(本上まなみ)が行天との娘はる(岩崎未来)を海外出張中預かってほしいと依頼に現れ、多田は子ども嫌いの行天をどう説得するか思案に暮れてしまう。一方、まほろ市の黒社会で一目置かれている星(高良健吾)より、無農薬野菜のビラ配りをする怪しげな団体の調査を依頼された多田と行天は、彼らの畑に侵入。もともと新興宗教団体であったことを突き止めるのだったが・・・。
今までのシリーズで登場した依頼人たちや町の人々とのやり取りが小気味よく展開する中、掴みどころのない行天の内面や彼が辿ってきた過去が、実の娘の登場によって浮かび上がる。幼少期のトラウマに向き合う行天と娘のはる、それを支える多田という束の間の疑似家族体験は、行天に「愛する人を守る」という強い気持ちを芽生えさせる。守るものができてこそ、人はまた一つ成長できるのかもしれない。
間引き運転に反対していた岡(麿赤兒)たちの引き起こすバスジャックに巻き込まれ、行天の教団時代の幼馴染であり、現在代表を務めている小林(永瀬正敏)と遭遇し、畳みかけるように展開する後半はまさに狂想曲状態だ。バディームービーならではのドキドキハラハラを体感しながら、過去の傷から新しい恋に踏み出した多田や、家族の愛を知り一皮むけた行天の姿がとても凛々しく映った。(江口由美)
(C) 2014「まほろ駅前狂騒曲」製作委員会