原題 | The Expendables 3 |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 2時間6分 |
監督 | パトリック・ヒューズ |
出演 | シルベスター・スタローン、ハリソン・フォード、メル・ギブソンジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ウェズリー・スナイプス、アントニオ・バンデラス、アーノルド・シュワルツェネッガー(ほかもスゴイ) |
公開日、上映劇場 | 2014年11月1日(土)~全国ロードショー |
~悪漢メルがカツ入れた“ポンコツ軍団”~
ハリウッドスター、メル・ギブソンを取材したことがある。米ロサンゼルスで行われたヒットシリーズ『リーサル・ウェポン4』(98年)のワールドプレミアで、華やかなレッドカーペット前に囲み取材した。時間的に大したことは聞けなかったが、ひとつ聞けたことがある。『マッドマックス』シリーズ(79~85年)はじめ、ハリウッドを代表してきたヒーローに「アクション俳優は何歳まで可能か?」と。
当時、メルは42歳。シルベスター・スタローンが「50歳まではアクションで勝負したい」と宣言して話題をまいた時期、メルもまた彼にならったか「50歳」と区切ったものだ。当のスタローンが、50歳をとっくに超えてなお、アクション俳優しているのが『エクスペンダブルズ』シリーズ。もはや驚異と言うしかないが、同じく50歳限界説を打ち出していたメルが3作目に顔を出しているのが感慨深い。
もっとも、メルは近年、大きく状況が変化した。95年の監督第2作『ブレイブハート』がアカデミー賞(監督賞、作品賞)受賞したのは並のアクションスターじゃないことの証明。キリストの最期を描いて物議を醸した『パッション』(04年)は空前の大ヒット、確かにヤツはただ者じゃない。
ところが昨今、彼の評価はガタ落ちだ。離婚→恋人への暴言、暴行疑惑、06年には飲酒運転&スピード違反に加え、取り締まりの警官に対してユダヤ人差別発言するなど『パッション』のキリストのようにムチ打たれっ放し。オーストラリアの大地をさっそうと駆けたヒーローの姿はもはやない。一体何が熱心なカトリック教徒だった彼を変えたのか?
そんなどん底、メル・ギブを知って? 救いの手を差しのべたのなら“呼び掛け人”スタローンは大したもの。しかもメルの状態を逆手に取って「エクスペンダブルズ(ポンコツ軍団)」の手強い敵役に抜てきするあたり、プロデューサーとしての手腕も並じゃない。
スタローン、シュワルツェネッガーら主役級勢揃いのエクスペンダブルズの弱点は、主人公たちが強すぎること、だった。そこに一人、今をときめく悪漢メルが参戦したら“正義の傭兵軍団”の引き立つこと。「アクションもの成功の秘訣は悪役の強さが決める」鉄則通りだ。ポンコツ組にも“ハン・ソロ”ハリソン・フォードが加わったが、それ以上の存在感はさすが“大悪人”か。
バーニー・ロス(スタローン)たちエクスペンダブルズの今度の仕事は創設メンバーの一人、ドク(ウェズリー・スナイプス)の奪還。囚人護送列車から救出する冒頭から息を飲むスリリング・シーン連発はこのシリーズの売り物。常連ジェイソン・ステイサム、ドルフ・ラングレンらも顔を見せてはやエンジン全開。 続いて雇い主CIAから武器強奪指令を受けた面々はきな臭いソマリアに向かうが、そこで死んだはずの武器商人ストーンバンクス(メル・ギブソン)を見て目を疑う。エクスペンダブルズを作った相棒なのに、チームを裏切り、バーニーが葬ったはずの男。幽霊のような仇敵の出現で作戦は失敗、チームは解散の危機を迎える…。
そこでCIAの大物マックス(ハリソン・フォード)が登場。彼はバーニーたちに「奴を世界の果てまで追いかけ、生きたまま確保せよ」と難儀な命令を下す。バーニーはやむを得ずポンコツ軍団の入れ替えを図る…。
豪華大物メンバーでもトシ食ったら入れ替え…という現実が3作目のミソ。入れ替え候補は、おしゃべりなスペイン軍兵士(アントニオ・バンデラス)、ハッカー専門男、接近戦得意の女、元特殊部隊員の4人だが、旧メンバーは不満たらたら。だが、宿敵の情報をつかんだチームはすかさず作戦発動する…。
ストーンバンクスとは何者か? バーニーの元僚友にして、エクスペンダブルズの創立メンバー、だが今は世界的な極悪人。CIAの標的なのだが、ポンコツ軍団と同類、もしくは親類ではないか。『スターウォーズ』で言えば“ダークサイド”に落ちたダース・ベイダーか。つまりCIAの使い古し。エクスペンダブルズの面々は自分の影を追っているとも言える。味方も敵もさほど変わらない複雑さが現代戦。そこが前2作を超えている。
緊急事態になるとトレンチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)やイン・ヤン(ジェット・リー)も参戦、豪華エクスペンダブルズが勢揃い、敵を木っ端微塵に粉砕する、この痛快丸かじり、圧倒的強さがいささかひ弱い今のアメリカの願望に違いない。
(安永五郎)
公式サイト⇒ http://expendables-movie.jp/
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