制作年・国 | 2014年 日本 |
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上映時間 | 2時間 |
監督 | 高山トモヒロ |
出演 | 浪岡一喜、趙珉和、小川菜摘、安田美沙子、石田えり、遠藤章造、梶原雄太、宮迫博之、オール巨人 |
公開日、上映劇場 | 2014年10月31日(金)~角川シネマ新宿、TOHOシネマズなんば他、全国ロードショー |
~天国の相方に捧げる、情熱と自問の漫才ヒストリー~
「夭折」という言葉を見たり聞いたりするたびに、文字どおりポキンと折れる音がする。芯がやわらかくない、硬いのだ。硬いものが折れると、その断面はギザギザだ。ギザギザは、その鋭利さでもって、長く、人の心をうずかせる。
かつて、関西お笑い界のホープとして活躍する漫才コンビ『ベイブルース』があった。その一人、河本栄得は、疾風のごとく生き、笑わせ、26歳になろうとする前日に、あっけなく病魔にやられた。それから15年後、相方の高山知浩は小説『ベイブルース 25歳と364日』を記し、それをもとにこのたび高山トモヒロ監督として映画化を実現。青春の傷みや苛立ち、栄光への野望、家族や友への思い…そんなものがごった煮的に放り込まれ、そして、胸の奥をきゅ~んと酸っぱくさせるような、ほろりとした後味だ。
高山と河本は、高校の同級生だった。幼い頃に母親が突然家を出てしまうという出来事があったけれど、どこかのほほんと自分の環境を受け入れてきた高山と比べ、河本は大人びていて強引、今に満足せず、自分の意志というものをしっかりと持っていた。そんなふたりが、漫才コンビを結成する。河本がボケ、高山がツッコミ。完璧をめざす河本は、高山に苛立ち、「俺の精密機械になれ!!」と怒鳴るのだ。
いわば天才と努力家のふたりであったのだろうか。努力家の高山には、天才肌の河本が本当は何を求めていたのかがわからない。生き急ぐように、自分を残して逝ってしまった河本に対し、そして自分自身に対しても、高山は今も問い続けているのだろう。「お前は誰だったのか? 俺にできることがもっとあったのだろうか? なぜだ? なぜだ?」…画面から伝わってくるような、声にならないその声が、本作を、センチメンタルな思い出話に陥ることから救っている。たぶん、15年以上という年月も、夭折した友が残したギザギザを幾分かやわらかくしているのかもしれない。
ナレーションのように時おり入ってくる少年の声。いつまでも少年の心を持った青年。彼は高山であり、河本でもある。主演ふたりの漫才シーンも含めた熱演は実に素晴らしいと思う。実際の『ベイブルース』の映像や、プロ顔負けの歌唱力で歌われる『夫婦きどり』に、 今は望むべくもないこのコンビのさらなる境地に思いを馳せる。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒http://bayblues.jp/
(C)2013「ベイブルース 25歳と364日」製作委員会