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『サスペクト 哀しき容疑者』

 
       

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作品データ
原題 THE SUSPECT
制作年・国 2013年 韓国
上映時間 2時間17分
監督 ウォン・シニョン
出演 コン・ユ、パク・ヒスン、チョ・ソンハ、ユ・ダイン、キム・ソンギュン他
公開日、上映劇場 2014年9月27日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、今秋京都シネマ他全国順次公開
 

~研ぎ澄まされた肉体と瞳が物語る“復讐” への執念~

 

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主人公チ・ドンチョルの孤独な狼のような瞳に、終始圧倒される。自らも非情な運命に翻弄されながら、妻子殺人犯に復讐するため脱北した元特殊工作員を演じるのは、『トガニ 幼き瞳の告発』での熱演も記憶に新しいコン・ユ。優しい眼差しが印象的なコン・ユが、そのイメージを180度変え、鍛え上げられた肉体(細マッチョ好きにはたまらない!)と、研ぎ澄まされた佇まいで、復讐に燃える孤独な男ドンチョルを体当たりで演じている。『セブンデイズ』のウォン・シニョン監督が、ハリウッドの名だたるアクション映画を凌駕する生身のアクションシーンをふんだんに投入。壮絶なアクションに、複雑な策略が絡み合い、脳と視覚がフル回転するようなサスペンス活劇だ。
 
 
北朝鮮特殊部隊の精鋭工作員だったチ・ドンチョル(コン・ユ)は、愛する妻子を殺し、韓国に逃げた犯人追跡と復讐のために生きていた孤独な男。だが、息子のようにドンチョルをかわいがっていた脱北出身の財界人パク・コノ会長の殺害現場に居合わせたがために、ドンチョルは殺人の容疑者となってしまう。ドンチョンを“北のスパイ”とみなした対北情報局室長キム・ソッコ(チョ・ソンハ)は、防諜(ぼうちょう)分野のエキスパート、ミン・セフン大佐(パク・ヒスン)にドンチョン追跡を命令。セフン大佐はかつて自らが左遷させられるきっかけとなった北がらみの武器密輸一掃作戦で、ドンチョンと交戦した記憶が甦るのだったが・・・。
 

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祖国のために厳しい訓練に耐え抜き任務を遂行していたにもかかわらず、上層部の方針転換を機に祖国から抹殺されそうになる悲運を背負ったドンチョル。絞首台でその時がきても、その強靭なる肉体と精神力を駆使し、驚くべき方法で脱出するのだから、人間の域を超えている。人間サイボーグを見ているようだ。また複雑な立場なのはドンチョルだけではない。追う側でありながら上司ソッコ室長の陰謀を知ってしまうセフン大佐も重大な決断を強いられる。真実を追求する姿勢を持ち得るかという人間性の部分で、いつの間にか相通じていくドンチョルとセフン大佐の男のサバイバルな友情も見どころだ。
 
 
後半のカーチェイスシーンは、韓国ならではの坂の多い街並みや狭い階段を自動車がバック走法で落ちていくとんでもない仕掛けもあり、『ワイルド・スピード』シリーズとはまた違った意味の壮絶感を味わえる。妻子殺しの犯人との対決や、そこで明かされた娘の真実など、最後の最後まで見逃せない2時間17分。復讐を果たした男に訪れたのは絶望か、希望か。ぜひ劇場で確かめてほしい。(江口由美)
 
 
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