制作年・国 | 2014年 日本 |
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上映時間 | 1時間54分 |
原作 | 原作: 西田征史「小野寺の弟・小野寺の姉」(リンダパブリッシャーズ刊) |
監督 | 監督・脚本: 西田征史 |
出演 | 向井理、片桐はいり、山本美月、ムロツヨシ、寿美菜子、木場勝己、麻生久美子、大森南朋、及川光博 |
公開日、上映劇場 | 2014年10月25日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、ほか全国ロードショー! |
~どこに出しても恥ずかしくない、小野寺姉弟です!~
姉・より子(片桐はいり)40歳、弟・進(向井理)33歳、遊園地のコーヒーカップのなか、物語はコミカルに始まる。眼鏡屋に勤める姉はおせっかいな店主夫婦に冷やかされながら通いのセールスマン(及川光博)に密かに思いを寄せている。調香師の弟は新製品“ありがとう”の香りを模索する日々。そんな変化のない日常にある日一陣の風が吹く。きっかけは間違って届いた郵便物だった。
誤送された郵便を二人で届けに行った先にいたのが絵本作家の岡野(山本美月)だった。顔も雰囲気も声も描く絵も、すべてがふわふわしている。いまどきアイドルでもこんな子はいないんじゃないかと思える。岡野に惹かれつつも別れた恋人に言われた言葉がトラウマとなって次の恋に踏み出せない進。そんな弟を案じつつコンプレックスから抜け出せない姉。早くに両親を亡くし親代わりとなって面倒をみてくれた姉への負い目も手伝って、ますます幸せに背を向ける進。二人の日常は永遠に滑車を回し続けるコマネズミのよう。
監督は原作者であり脚本家の西田征史。本作が監督デビューだが、すでに昨年主役の二人を起用して舞台作を上演している。映画は小説の世界を、舞台はその後を描いたもので、小説を読んだ人、舞台を観た人、映画が初見の人、それぞれの楽しみ方がありそうだ。
作中で岡野と進が作り上げていく絵本がサブストーリーとして映画全体のエッセンスとなっている。それは主人公のペロ(犬)が旅をしながら出会う人たちに“親切”にするというもの。その“親切”は本当の親切なのか、という物語。映画はこの絵本を通して私たちに本当の優しさとは何かと問いかける。針ねずみは近づきすぎるとお互いの針で体を刺してしまうから一定の距離以上には近づかない、なんていう例え話もあるが、表面的な優しさこそ時に人を傷つける。そして、近づかなければ傷つかないかわりに関係も深まらない。一歩踏み出さなければ、風を感じることも、景色が動くこともないのだ。
姉弟の元担任教師(木場勝己)がいい味出している。金八先生ほど濃くはないけど人情味があって、だじゃれ、ではなく言い間違いの天才だ。“ピロシキ”を“モモシキ”、“腎臓結石”を“心臓結石”など突っ込みどころ満載。先生は偶然再会した病院で碁を指しながらより子に話す。十代の頃に聞いたとしても腑に落ちなかったであろうことが、今なら胸に響いてくる。人生は受身で生きるには短か過ぎる。心の奥にある本当の思いを自分のなかで認め解放できたとき、初めて自分らしい人生を歩き出せるのだと、これまた言い間違いに乗せて教えてくれるところが心憎い。
(山口 順子)
公式サイト⇒ http://www.onoderake.com
(C)2014 『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会