『不機嫌なママにメルシィ!』
原題 | Les garcons et Guillaume, a table! |
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制作年・国 | 2013年 フランス、ベルギー |
上映時間 | 1時間27分 |
監督 | 監督・脚本:ギヨーム・ガリエンヌ |
出演 | ギヨーム・ガリエンヌ、アンドレ・マルコン、フランソワーズ・ファビアン、ナヌー・ガルシア、ダイアン・クルーガー、レダ・カテブ、ゲッツ・オットー他 |
公開日、上映劇場 | 2014年9月27日(土)~新宿武蔵野館、10月4日(土)~シネ・リーブル梅田、11月1日(土)~京都シネマ、11月29日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~みごとな“ママ”と“ボク”の二役!才人ぶりを如何なく発揮した注目作~
ハリウッド映画の情報はすぐに仕入れられるけれど、ヨーロッパ映画のそれは一般的に届きにくい日本。ギヨーム・ガリエンヌという発音しづらい名前を聞いて、「ああ、あのひとね」とすぐにわかるのは、よほどの映画通・演劇通であろうが、彼を知る人も知らない人にも必見の一作だ。単なるコメディドラマという枠組みを超え、全編、才気がほとばしっているなと感じ入った。
もともとギヨームの自伝的な舞台劇としてヒットしたものを、ギヨーム自ら初監督で映画化。冒頭、楽屋からステージへ向かうギヨームの姿が映し出される。その表情には張りつめたような緊張感があふれている。そして、彼は語り始めるのだが、ここから映画的空間へと一気に移りゆく。ハプニングと失意の連続だった幼少時代から青春時代、守護神なのか背後霊?なのか、いつも彼に大きな影響を与え続けてきたママのこと、そして、自身のセクシュアリティの在りかについて。
女の子が欲しかったママから女の子のように育てられ、マッチョな父親や2人の兄から“困った奴”扱いされてきたギヨームは、アイデンティティを探る放浪を重ねる。スペインへ、イギリスへ、ドイツへ…、行く先々での騒動ではおなかの皮がよじれるような大笑いをもたらしてくれるが、どこか一抹の哀愁が寄り添ってくる。彼は、自分がゲイであるのかストレートなのか、それもよくわからないのだ。そこに居るはずのないママが突然姿を現すという手法は、映画よりも演劇的であるのだけれど、それが全く違和感を生じさせず、主人公とママの関係性をより濃密に訴えてくる。
とにかく、ママを演じているギヨームに見とれる。けっこう美脚?な足にハイヒール、そのエレガントな歩き方、煙草を吸ったりベッドで本を読んだりする仕草。こういうマダムがそばにいたら、なんの疑いもなく、全く自然に受け入れてしまうだろう。実にうまい!
舞台での一人語りで始まるこの映画は、やはり一人語りの舞台で終わる。“本当の自分”を見つけた主人公の、ちょっぴりほろっとさせられる言葉が出てくる。それを客席で見守っている女性が一瞬映るのだが、ギヨームの本当のママだと思われる。ちなみに、本作は2014年セザール賞で5部門に輝いた。
(宮田 彩未)
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