『リスボンに誘われて』
原題 | NIGHT TRAIN TO LISBON |
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制作年・国 | 2012年 ドイツ・スイス・ポルトガル |
上映時間 | 1時間51分 |
監督 | ビレ・アウグスト |
出演 | ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング |
公開日、上映劇場 | 2014年9月13日(土)~Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、9月20日(土)~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~人生を一変させ、新しい扉を開く“一瞬の決断”というもの~
JR大阪駅のプラットフォームに立っていると、遠く離れた場所へ向かう列車が滑り込んでくる。その瞬間、「このままあの列車に飛び乗ってしまいたい」という欲望がいきなり湧き上がってくる。でも、自分はそうしないだろうということをどこかでちゃんと知っていて、私はため息まじりにその列車を見送るのだが、その欲望を生じさせる核はいつも胸の奥に在る。
スイスのパスカル・メルシエが書いたベストセラー小説を映画化した本作。主人公は、私と違ってリスボンへの夜行列車に思い切って飛び乗り、そうしてこれまで全く知らなかった人々と世界に触れるのだ。スイスの高校で古典文献学を教えているライムントは、妻と離婚してやもめ暮らし。地味で几帳面な性格、大胆な行動に出るような人物ではない。ところがある日、橋から飛び降りようとする若い女性を助けたことで、人生が方向転換する。その女性が忘れていった本とその本に挟まれていた一枚の切符が、彼をリスボンの街へと運ぶのである。
その本、『言葉の金細工師』はライムントを魅了し、作者であるアマデウに会いに行くが、アマデウはすでにこの世にない。だが、彼を知る人々との出会いにより、リスボンを揺るがした60年代の民主化運動にアマデウも関わったことがわかり、歴史の爪痕やある愛の物語が照らし出されていく。一冊の本が導き、単なる好奇心から始まったライムントの旅は、やがて真実を追いかける旅となり、過去と現在を行ったり来たりする映像によって次第に核心へと向かう展開に、とてもわくわくさせられた。そして、ライムントがリスボンで知り合った眼科医のマリアナと駅で別れを告げようとするラスト、結局、主人公が何を選択したか、想像するに結果は明らかなのだが、おとなの男と女が気持ちを交わし合う実に素敵な場面である。
スクリーンを華やかに彩ってきた名優がずらり登場するのも嬉しい。デンマークの名匠ビレ・アウグストが風情あるリスボンの街の魅力も映し込みながら、文芸的なタッチにサスペンスのエッセンスを絡ませて楽しませてくれる。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://lisbon-movie.com/
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