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『6才のボクが、大人になるまで。』

 
       

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作品データ
原題 BOYHOOD
制作年・国 2014年 アメリカ
上映時間 2時間45分
監督 リチャード・リンクレイター
出演 エラー・コルトレーン、パトリシア・アークエット、ローレライ・リンクレイター、イーサン・ホーク他
公開日、上映劇場 2014年11月14日(金)~TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ西宮OS、TOHOシネマズ二条他全国ロードショー
受賞歴 第64回ベルリン映画祭銀熊賞受賞/国際映画批評家連盟グランプリ作  ★第87回アカデミー賞 助演女優賞 受賞(パトリシア・アークエット)
 
 

~こうして人は成長する。ある家族の12年間をつぶさに捉えた奇跡の映画~

 

大きくなったら憎まれ口しか叩かない男子も、子どもの頃は天使のようにかわいいということを、私も双子男子の親となって初めて知った。特に6歳から10歳ぐらいまでの声変わり前の男の子は、精神的におませな女の子よりも幼く、そしてキュートだ。オープニングで、6歳の主人公メイソンが芝生の上で仰向けになり空を眺めるショットを見た時、そのかわいらしさに悶絶しながら、どのように成長していくのか一瞬たりとも見逃すまいと心に誓った。ドキュメンタリーではなく、劇映画として12年間の家族の成長や変容を捉える未だかつてないプロジェクトを提議したのは、『ビフォア』三部作で男女の愛を時の経過と共に綴ったリチャード・リンクレイター監督。子どもたちだけでなく、母や父も忙しい日々の中で子どもと共に成長し、自分の生き方をみつけ、子離れしていく。2時間45分で振り返るある家族の12年間は、奇跡の瞬間を見つける楽しみに溢れている。

 

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メイソン(エラー・コルトレーン)は、6歳のとき母オリヴィア(パトリシア・アークエット)が大学に行くため、テキサス州から祖母の住むヒューストンへ突然引っ越す。アラスカに行っている離婚した父メイソンSr(イーサン・ホーク)が見つけられなくなると心配したメイソンだが、1年半ぶりに父が現れ、姉サマンサ(ローレライ・リンクレイター)とボーリングで楽しむのだった。一方オリヴィアには大学で新しい恋人ができ、メイソンたちには新しい父と兄弟ができるのだったが・・・。
 
 

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劇的な出来事は起きないが、着実に時間は1年単位ぐらいの勢いで流れていく。メイソン、サマンサの肉体的な成長はもちろんのこと、どんどん子供っぽさが抜けて大人っぽくなり、家に居つかなくなるけど一応母親のことは気にかけているメイソンの精神的な成長は、我が子の成長を見るようで親近感が湧く。パトリシア・アークエット演じる母が、子育てに奔走しながらも自分の目標に向かって邁進する姿や、イーサン・ホーク演じる父がGTOを乗り回し、アウトローな暮らしをしながらも子どもたちとの時間を大切にし、最後にはワゴン車に家族を乗せるマイホームパパになる姿など親が成長する様子も細やかに描写。時間は皆に平等に与えられるのだという当たり前のことを痛感するのだ。また、メイソン父子の人生や女子にモテるコツにまつわる話は、父と息子の秘密の会話を覗き見したみたいで面白い。離婚した父と離れ離れになった子の関係も、継続して描かれることで途絶えることのない絆が浮かび上がってくるのだ。
 
 

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ドラゴンボール、トイストーリー、ハリーポッターといったアニメ・小説から、スケルトンデザインが懐かしい初代iMac、ゲームボーイアドバンスと子どもたちを取り巻くサブカルチャーの変遷や、ファルージャ事件、9.11、大統領選挙とアメリカが対面してきた問題を巧みにストーリーに盛り込み、リチャード・リンクレイター監督らしい「リアルさ」を感じさせる。普遍的な家族の物語でありながら、90年代後半からゼロ世代の12年間を一気に体感できる壮大さと緻密さを併せ持った作品は、青春映画としても稀有な存在であり続けるだろう。(江口由美)
 
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