原題 | MY STUFF |
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制作年・国 | 2013年 フィンランド |
上映時間 | 1時間20分 |
監督 | ペトリ・ルーッカイネン |
出演 | ペトリ・ルーッカイネン |
公開日、上映劇場 | 2014年8月30日(土)~ユーロスペース、9月20日(土)~シネ・ヌーヴォX、9月24日(火)~オーディトリウム渋谷、9月27日(土)~京都みなみ会館他全国順次公開 |
~モノと自分の関係を見直すフィンランド版“断捨離のススメ”~
生きている限り、自分の身の回りにモノが増えていく。特に今の日本は使い捨て文化で、モノもゴミも増える一方だ。結婚し、家族が増えればその増え方は2倍どころか2乗、3乗。かくいう私も3人の子どもたちの成長に合わせてモノを揃えるうちに、家の中がモノで溢れかえっている。そんな私に今一番グッとくる言葉が、「シンプルライフ」。このフィンランド発の大胆なシンプルライフ実験を観ていると、ツッコミを入れたくなる場面は多々あれど、色々な発見があるのだ。
彼女にフラれたことがきっかけで、趣味に没頭し、モノが増えてしまった主人公のペトリは、モノと決別し、必要なものだけを選択するべく大胆な実験を思いつく。それは、家の中のモノを全て倉庫に運び、1年間ルールに従って生活するというもの。1年間何も買わないことや、1日1個だけモノを運び出すことができると決め、寒い冬に文字通り裸一貫で実験を始めたペトリだったが・・・。
ただでさえ寒いフィンランドの、しかも真冬に実験を開始し、いきなり外のごみ箱で見つけた新聞紙で大事な部分を覆って倉庫に裸足で走るペトリの姿はまるで罰ゲームのようだ。だが、彼の1日1個持ち帰るモノの選択を見ていると、10個ぐらいで一応生活できていることに気付かされる。ただ、この実験が多くの友人の手伝いや親、兄弟の差し入れなど随分周りの協力を得て行われているあたりは、やや自己満足気味なものであることは否めない。また、実験後半になって彼女ができた途端にモノが増え、「シンプルライフは一人暮らしでないと無理!?」とツッコミたくなる局面も。まあ、ストイックすぎないところが、シンプルライフを続ける秘訣なのかもしれない。
本作でもう一つ興味深かったのは、フィンランド人の暮らしぶりを体感できたことだ。大きな倉庫に日頃使わないものは保管しておいたり、家電(冷蔵庫)も簡単に買い替えず、まず修理に出したりと。子どもが生まれる際には、国から赤ちゃんセット(新生児に必要な衣類他が全て含まれている)が支給されるなど、観光では分からないフィンランドの一面に触れることができる。北欧ミュージックではなく、ジャズがBGMで使われているのも新鮮な、モノを持つことの意味を考えたくなるドキュメンタリー。本作に触発され「私も目指せシンプルライフ!」と思った矢先に、腕時計版iPhone(Apple Watch)来年発売のニュースを見て心ときめいているようでは、その道のりはまだまだ険しそうだ。(江口由美)
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