『プロミスト・ランド』
原題 | PROMISED LAND |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間46分 |
監督 | 監督:ガス・ヴァン・サント 脚本:ジョン・クラシンスキー、マット・デイモン |
出演 | マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デヴィット、スクート・マクネイリー、タイタス・ウェリヴァー、ハル・ホルブルック |
公開日、上映劇場 | 2014年8月22日(金)~TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ、シネマート心斎橋、京都みなみ会館、109シネマズHAT神戸、他全国ロードショー |
~誤りを正す勇気と生き方が問われる感動作~
『プロミスト・ランド』は、マット・デイモンとジョン・クランシーが共同で脚本を書き、人間性あふれる演出で定評のガス・ヴァン・サントが監督をしている。地下資源(シェールガス)開発のため採掘権を交渉する“ランドマン”と言われるビジネスマンの物語である。不況にあえぐ人々のためと信じて交渉を重ねてきた主人公が、実は自然破壊をもたらす事業だと気付き、それまでの生き方を変える一大決心をする。その誠実さが清々しい。
出世を棒に振ってまでも方針転換するなんて中々できることではない。個人的な利益より、未来への遺恨とならないためにも、何としても開発を避けなければならないと思ったのだろう。誠実なマット・デイモンだからこそ成立する作品だ。また、アメリカの故郷を象徴するような風景が素晴らしい! 未来へと引き継ぐべき自然は、お金に代替できるものではないと納得できる。
【STORY】
大手エネルギー会社のエリート社員のスティーヴ・バトラー(マット・デイモン)は、地下深く埋蔵するシェールガス採掘のため、地主たちから採掘権を買い取る仕事をしていた。地方出身のスティーヴは不況に影響される農業を熟知しており、地主たちの苦境に共感するトークで交渉を成功させてきた。出世も間近だと上司に励まされ、ビジネスパートナーのスー(フランシス・マクドーマンド)と共にマッキンリーという町へとやってきた。
警戒されないよう町に入る前に、スーツからチェックのネルシャツにチェンジするという周到ぶり。根回しも順調で、1回目の町民集会で賛同を得られると思っていた処、高校教師のフランク(ハル・ホルブルック)がシェールガス採掘による環境への悪影響について再考するよう提案、決議が遅れることに。さらに、環境保護団体のダスティン・ノーブル(ジョン・クランシー)という男が現れ、いよいよ交渉が困難になっていく。
スティーヴは、小学校教師のアリス(ローズマリー・デウィット)と知り合い、田舎暮らしの豊かさや穏やかな時間の流れに感じ入るようになる。郷愁が愛着へと変わろうとしていた矢先、スティーヴのそれまでの価値観を大きく揺るがすような、ある真実を目の当たりにすることになる。
★シェールガスについては、日本でも新潟県にかなりの埋蔵量があると判明し、輸入エネルギーに依存する日本にとっては明るいニュースだとTVでは報じていた。だが、今の採掘方法では、地下3000mに埋蔵する鉱脈を薬品で溶かしてシェールガスを分離させる方法を執るらしい。それでは米どころの新潟の地下水が汚染されるのでは?地層が乱れ地震発生の原因にはならないのだろうか?と、ただでさえ地盤の弱い日本列島の住民としては、とても手放しで喜べなかった。
★マット・デイモンがベン・アフレックと共同で脚本を書いて主演し、ガス・ヴァン・サントが監督した映画といえば『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(‘97)を思い出す。そして、今年8月11日に亡くなったロビン・ウィリアムズの優しい笑顔も忘れられない。エネルギッシュにキャラクターを生きてきたロビンの出演作はどれも印象深い。この作品でロビンはアカデミー賞助演男優賞を、マット・デイモンとベン・アフレックは脚本賞を受賞している。自分たちの映画を創ろう、自分たちの想いを伝えよう、そんな若者の情熱に真摯に応えたロビンの誠実さが滲み出ていた。まだ63歳、もうあの人懐っこい笑顔が見られないと思うととても寂しい。心から哀悼の意を表したい。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.promised-land.jp/
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