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『グレート・ビューティー/追憶のローマ』

 
       

GB-550.jpg『グレート・ビューティー/追憶のローマ』

       
作品データ
原題 La grande bellezza 
制作年・国 2013年 イタリア・フランス 
上映時間 2時間21分
監督 監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演 トニ・セルヴィッロ、カルロ・ヴェルドーネ、サブリナ・フェリッリ、ファニー・アルダン
公開日、上映劇場 2014年8月23日(土)~Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテ、梅田ブルク7、シネマート心斎橋、京都シネマ、近日~元町映画館 ほか全国順次公開
受賞歴 ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、アカデミー賞の外国語映画賞など多数受賞

 

~ローマと、美と、人生と、ノスタルジーと。~

 

 人間の営みのすべてを歴史のヒダとして積み重ねてきたような“永遠の都”ローマ。バチカン周辺やボルゲーゼ公園など荘厳な佇まいのローマ中心部を舞台に、人生も終盤に差し掛かった男の未だ満たされぬ想いで生きている心の軌跡を描いている。自らの想いとは違う虚無的人生を傍観しながらも、ノスタルジーの世界にある純粋な情熱に生きる活力を見出していく。多くの物語を生み出してきたローマの、かつてない映像美は圧巻!

GB-2.jpg パオロ・ソレンティーノ監督は、『イル・ディーヴォ-魔王と呼ばれた男-』(‘08)で魑魅魍魎(ちみもうりょう)とした政治の世界を達観したタッチで驚愕させ、ショーン・ペン主演の『きっとここが帰る場所』(‘11)では心の隙間を埋める旅を通じて自分自身の在り様を見つめてきた。本作では、ドラマチックな情緒を排し、長い歴史が育んだ美術館のようなローマを成功の象徴としながらも、出発点となった若かりし頃へのノスタルジーへと変化させていく。監督44歳にして、「無垢なる精神」との出会いが人生に喜びと活力を与えてくれると示唆しているかのようだ。
 


  【STORY】
 40年前処女作がベストセラーとなった作家のジェップ・ガンバルデッラは、その後小説ではなく著名人のインタビュー記事や評論文などを書いていた。夜な夜なセレブの集まるパーティーやイベントに興じては、新たな出会いや別れを体験し、明け方、修道女たちの祈りが聞こえる頃、清冽な空気に包まれたテヴェレ川沿いの遊歩道や新たな一日を祝福するような日差しの中、歩いて帰路に着くという日々を過ごしていた。
 

GB-3.jpg 新たな小説を書くキッカケを掴めないまま65歳になった今、初恋の人エリーザが亡くなったという報せを彼女の夫から告げられる。しかも、「ずっとジェップのことを愛していた」と。処女作を生む原動力となったエリーザとの恋だったが……その後、友人の息子の自殺や、不思議と共感し合える女性ラモーナの病死など、自分より若い世代の死にショックを受ける。残りの人生を思い遣ると同時に、純粋に愛を求めていた昔の自分に立ち帰ろうとする。そんなジェップの背中を押してくれたのは、ジェップの小説のファンだという100歳を超えるシスター・マリアの存在だった。「人生はまだ終わらない」と、未だかつて見たことのないローマの夜明けを見せて、ジェップを励ますのだった。
 



 フェリーニの『甘い生活』(‘60)や『フェリーニのローマ』(‘72)を連想させるが、ジェップは決して自堕落な人生を生きてきた訳ではない。彼なりの価値観で美を探求し続けてきたが、物語を創り出す原動力になり得るものに出会えていなかっただけ。情熱に欠ける生活に、次々と「喝」を入れる出来事が起こる。ローマにはすべてがあるようで、本来自分が求めているものはないと悟る。ジェップの心の軌跡を疑似体験しているような不思議な感覚に浸りながら、純粋で無垢なるものに出会う感動を体感できる。フェデリコ・フェリーニ監督の鋭い風刺感覚とは別に、パオロ・ソレンティーノ監督の人生を謳歌しようとする豊かな美的感覚にあふれた、イタリア人にしか撮れない傑作だと思う。
 

 主人公を演じるのは、ソレンティーノ作品の常連でもあるトニ・セルヴィッロ。『イル・ディーヴォ~』では“魔王と呼ばれた男”を飄々とした怪演ぶりで強烈な印象を残した。『それは息子だった』(‘12)では、鉄くず拾いで一家を支える逞しいシチリアのオヤジっぷりが眩しかった。時に、何を考えているのか読めない人物を怪しく魅力的に演じるセルヴィッロ。《イタリア映画祭2014》で上映された『自由に乾杯』(‘13)では対称的な性格の双子の役を意気揚々と演じ分けていた。まだ今年55歳なのに、なぜかいつも年配の役が多い。彼の出演作にハズレはない!
 



 『グレート・ビューティー/追憶のローマ』は、今年の4月末開催された《イタリア映画祭2014》のクロージング作品だった。それまで今年の出品作の質の高さに喜んでいたが、最後に本作を見て、そのスケールの大きさに圧倒されてしまった。「心ここに在らず」状態で新幹線に飛び乗って東京を後にした。あまり見たことがないローマの美しい映像を背景に、すべてを得てもなお満たされない主人公の心の軌跡を綴った物語は、時間を経るほどにローマの街が膨らんできて、心を捉えて離さない。こんな映画体験も珍しい。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://greatbeauty-movie.com/

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