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『舞妓はレディ』

 
       

maikohalady-550.jpg『舞妓はレディ』

       
作品データ
制作年・国 2014年 日本 
上映時間 2時間15分
監督 監督・脚本:周防正行
出演 上白石萌音,長谷川博己,富司純子,田畑智子,草刈民代,渡辺えり,竹中直人,髙嶋政宏,濱田 岳,小日向文世,岸部一徳
公開日、上映劇場 2014年9月13日(土)~全国東宝系にてロードショー

 

~直向きな少女,慈しむ人々,生きる歓び~

 

maiko-3.jpg 富司純子(すみこ)が藤純子(じゅんこ)の名前で出ていたときの当たり役である緋牡丹お竜のパロディで幕が開き,懐かしく微笑ましい空気が広がる。そして,「舞妓はレディ」という,控えめっぽくカラフルなタイトルデザインと,夢が広がるように明るいメインテーマが,明日に咲く花の香りを伝えてくれる。京都の花街と言っても上七軒ではなく下八軒という架空の舞台で,いかにものオープンセットが半端ないワクワク感を生み出す。
 

 オーディションで選ばれた上白石萌音が春子に生命を吹き込み,その魅力を引き出している。春子は,下八軒唯一の舞妓の百春(田畑智子)のブログを見て,舞妓へのチャレンジのために上洛してきた。何と春子は鹿児島弁と津軽弁のバイリンガルだ。彼女がお茶屋「万寿楽」からお店出しして舞妓の小春として歩み始めるまでの,稽古に励む姿が描かれる。その中で彼女の亡き母が一春と名乗っていたことが隠し味のように風味を引き立てる。
 

maiko-2.jpg 春子は,言語学者の京野の指導を受け,京ことばをマスターしようと苦闘する。その効果が聴覚だけでなく視覚的にも理解できるよう工夫されている。イントネーションがモニター画面に波形で表示されるのだ。春子は,白川淑の詩集「花のえまい」を朗読するシーンで弾け,クライマックスへと向かう。「ピグマリオン」やそのミュージカル化「マイ・フェア・レディ」のイライザを思わせるが,全く違う展開で,設定を借用したに過ぎない。
 

maiko-4.jpg 周防正行のミュージカルとして楽しい。歌うことで,竹中直人が男衆の説明をし,長谷川博己が必須3ワードを教える。中村久美が日舞の師匠として貫禄を示すだけでなくお茶目な姿を見せ,芸妓になる田畑智子が襟替えの喜びを歌う。春子がうぶな恋を歌うシーンから芸妓の里春(草刈民代)が大人の恋を歌うシーンに繋ぎ,その濃淡を鮮明にする。女将の千春(富司純子)が銀幕スターとの初恋を語るシーンでは,映画への愛が込められた。
 

maiko-6.jpg 春子に注がれる視線に温もりがある。そこには登場人物だけでなく監督の視線もある。「シコふんじゃった。」(1991)では相撲の虜になった男子学生を,「Shall we ダンス?」(1996)では社交ダンスにのめり込む会社員を,そして本作では舞妓の世界に飛び込む少女を映している。いずれも主人公のフレッシュな直向きさが共感を呼ぶ。構想20年,満を持しての映画化,という謳い文句が似合うほど久しぶりに明るくアツい作品がやって来た。

(河田 充規)

公式サイト⇒ http://www.maiko-lady.jp

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