『猿の惑星:新世紀(ライジング)』
原題 | DAWN OF THE PLANET OF THE APES |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 2時間11分 |
監督 | マット・リーヴス |
出演 | アンディ・サーキス,ジェイソン・クラーク,ゲイリー・オールドマン,ケリー・ラッセル他 |
公開日、上映劇場 | 2014年9月19日(金)~TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー |
~21世紀の猿の惑星は,一味も二味も違う~
前作「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(2011)では,アルツハイマー病の新薬がエイプ(類人猿)の脳を活性化し知性を向上させ,その遺伝子を継いだシーザーがヒューマン(人間)に対して反乱を起こした。一方,改良したはずの新薬が人間にとって致死率の高いウイルスを生み出した。本作では,その10年後の世界が描かれる。シーザーをリーダーとする類人猿が森の中で暮らし,免疫のある人間がサンフランシスコで生き延びていた。
人間は,電気を確保するためダムがあった森に入り込み,類人猿と遭遇する。類人猿と人間との間に再び戦争が勃発しそうな危機的状況となるが,シーザーが切実に電気を求める人間の心情を汲み,森の中で人間が作業することを許容する。戦争を始めると築いたもの全てを失い,未来も失われる,とシーザーが言う。しかし,人間に憎しみだけを教えられたコバは,類人猿が生き残るためには人間を先制攻撃しなければならないと血気に逸る。
民族や宗教で対立する現代の地球上の人間社会を投影したような筋立てが展開する。モーション・キャプチャーを駆使した視覚効果が素晴らしく,類人猿の動作や表情にリアリティがある。しかも,類人猿と人間を単純に善と悪に区別できないように描かれている。映像世界は,自己完結するのではなく,現実世界とリンクする。どうすれば戦争を回避できるのか,怒りや憎しみがある限り戦争は回避できないのか,という重い問いが残された。
以前の“猿の惑星“シリーズ5作(1968~1973)は,①「猿の惑星」「続猿の惑星」と②「新・猿の惑星」「猿の惑星征服」「最後の猿の惑星」に分けられる。①では人間も類人猿も地球と共に消滅し,②では人間と類人猿が地球上で共存する,という異なる結末だったと思う。本作の終盤には「エイプは戦争を始めた。人間は許さない。」というシーザーの台詞がある。映画は時代を映す鏡だと言われるが,②の結末に向かって欲しいものだ。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-r/
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