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『リトル・フォレスト 夏・秋』

 
       
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作品データ
制作年・国 2014年 日本 
上映時間 1時間51分
原作 五十嵐大介著『リトル・フォレスト』(ワイドKC アフタヌーン)講談社刊
監督 森淳一
出演 橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、温水洋一、桐島かれん他
公開日、上映劇場 2014年8月30日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
 

~東北の風情を感じて、Let’s スローライフ!~

 

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生きることは食べること。日々食べ盛りの子どもを育てながら、私が母親として痛感していることを、今一番輝いている若手女優の橋本愛が黙々と実践している。シンプルだが、農作物を作ったり、材料を集めるところからはじまる東北での丁寧なスローライフを観ていると、今の自分の生き方をも問い直されているような気がしてくるのだ。五十嵐大介の人気コミック『リトル・フォレスト』をもとに、「夏・秋」編(2014年8月30日公開)と「冬・春」編(2015年2月14日公開)の2部構成で東北の四季の中で食を大事にした暮らしと少女の成長を綴る物語。尖った役を演じることが多かった橋本愛の“農業女子”ぶりにも注目したい。
 

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東北のとある小さな集落・小森で生まれ育ったいち子(橋本愛)は、都会生活を送った後実家で一人暮らしをしている。隣町のスーパーに行くのも一日がかりになる不便な場所だが、いち子はお米をはじめ、自ら野菜を育て、野山の恵みをいただきながら、季節の材料を丁寧に料理していく。額に汗して農作業に励んだ夏から、実りを迎えた秋へ、季節の移ろいに応じて、来たるべき冬に備えて保存食も作っていくいち子の頭によぎるのは、母、福子(桐島かれん)のことだった。

 

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ストーブの熱で焼きあげる地粉を使ったストーブパンをはじめ、甘酒、ぐみの実ジャムと、橋本愛演じるいち子が一人で丁寧に作り上げていく様子が本当に美味しそうに映し出される。本作で食べるものを作るシーンをディレクションしているのは「ごはん映画祭」でもお馴染みの料理研究家・野村友里率いる「eatrip」チーム。ウスターソースが手作りできることもこの映画で初めて知ったし、合鴨のステーキに至っては鴨をさばくところからはじまるなど、いち子の奮闘ぶりがお分かりいただけるだろう。大自然の中で育まれた食材を丁寧に調理し、じっくり味わっていただく日々がこんなに心豊かにしてくれるなんて!
 

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『重力ピエロ』の森淳一監督が、岩手県奥州市で約1年間に渡るオールロケを敢行。少女が一人暮らしで自給自足の生活なんて現実離れしているが、逆にファンタジーのようなやわらかい映像でいち子が農作業に精を出す姿をキラキラと映しだした。友人役として登場する三浦貴大、松岡茉優、そして地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちと、作ったお料理をお裾分けしながら、いち子が世間話に花を咲かせる様子も微笑ましい。素朴な営みが絵になる映画。母の秘密を含め、半年後公開の「冬・春編」でどんな季節の恵みが登場するかも楽しみにしていたい。(江口由美)
 
(C) 「リトル・フォレスト」製作委員会
 

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