制作年・国 | 2014年 日本 |
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上映時間 | 1時間35分 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
監督 | 八木竜一、山崎貴 |
出演 | 水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、妻夫木聡他 |
公開日、上映劇場 | 2014年8月8日(金)~全国東宝系ロードショー |
~のび太の葛藤と成長がリアルに迫る!3DCG版ドラえもん総集編~
1970年小学館学年雑誌への連載から始まった藤子・F・不二雄の国民的アニメ『ドラえもん』。私も未来から来たネコ型ロボット“ドラえもん”と、勉強も運動も全然ダメだけど同級生しずかちゃんを好きなことだけは誰にも負けない少年のび太が繰り広げる悲喜こもごものストーリーや、ドラえもんがのび太の窮地を救うためにポケットから取り出すひみつ道具のユニークさの虜になり、毎号読むのを楽しみにしていた読者の一人だった。『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴と『friends もののけ島のナキ』の八木竜一が共同監督したドラえもん初となる3DCG版作品は、ドラえもん総集編と言うべきのび太とドラえもんの出会いから別れ、そしてしずかちゃんとの未来と名場面を凝縮。今までにないリアルな質感や登場人物たちの表情の豊かさを見ていると、愛読していた当時のワクワクした感覚が甦る。
物語はドラえもんがのび太の子孫であるセワシとタイムマシンでのび太を訪れるところから始まる。のび太は、自分が思い描く未来と程遠い結婚をし、ぱっとしない人生を送ったせいで子孫まで被害をこうむっていることを知らされ衝撃を受ける。そんなのび太にセワシが世話役として残したドラえもんは、のび太が幸せを実感するまで未来に帰れないのだ。ガキ大将ジャイアンの言いなりにならざるをえない、何をやってもダメなのび太のために、ドラえもんは次々と未来のひみつ道具を使ってのび太をフォローするのだが・・・。
何をやってもうまくできないのび太の口癖は「どうせ僕は・・・」。自分に自信が持てないのび太は、大好きなしずかちゃんの好意もうまく受け止められない。でも真っ直ぐな心を持つのび太は、ドラえもんのひみつ道具で少しずつ自信をつけ、ドラえもんと二人三脚で少しずつジャイアンへの苦手意識を克服し、しずかちゃんとの友情を築いていく。今の頑張りが未来を変える、まさに時空を行き来するのび太少年の成長物語は、今までどれだけの子どもたち、かつては子どもだった大人たちを元気づけてきたことだろう。そして今、のび太のような子どもを持つ親となった私も大いに勇気づけられている。
それにしても、3DCGとなったドラえもんやのび太のふっくらとした愛らしさや、和田アキコそっくりのジャイアンの存在感、そしてしずかちゃん(特に大人しずかちゃん)の美しさなど驚きがいっぱい。また、タケコプターで空を飛ぶときの疾走感はまるでスパイダーマンのようだ。他のひみつ道具もリアルかわいく再現されており、子どもの気持ちに戻って「ほしい!」と思うほど。さらに、のび太が大人になった未来の世界の描写も、70年代に“未来”と感じた光景を再現しており、ワクワク感を倍増させる。
伝説の「雪山のロマンス」エピソードや、ドラえもんが未来に帰るときの感涙エピソードと共に微笑ましく思ったのは、大人になったのび太が、変わらずジャイアンやスネ夫、出木杉くんと仲良くしていることだ。ケンカをするからこそ友達で居続けられる関係は、今の時代には作りにくくなっている。また、プロポーズを了承したしずかちゃんに、しずかちゃんの父が「のび太君を選んだ娘を誇りに思う」と告げるシーンも感動的だった。かつてはひみつ道具の楽しさに心を奪われていたが、改めてドラえもんとのび太の軌跡を目の当たりにすると、ヒューマンストーリーとしての語り口の豊かさが胸に響くのだ。
(江口由美)
(C) 2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会