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『なまいきチョルベンと水夫さん』

 
       

chorben-550.jpg『なまいきチョルベンと水夫さん』

       
作品データ
原題 Tjorven, Batsman och Moses 
制作年・国 1964年 スウェーデン 
上映時間 1時間32分
原作 アストリッド・リンドグレーン著(「わたしたちの島で」岩波書店刊)
監督 オッレ・ヘルボム
出演 マリア・ヨハンソン、クリスティーナ・イェルトマルク、ステファン・リンドフォルム、トシュテン・リリエクローナ
公開日、上映劇場 2014年8月2日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、8/16(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開

 

  ~北欧のブサかわアイドル-チョルベンに夢中!~

 

 『長くつしたのピッピ』や『ロッタちゃん』でおなじみ、スウェーデンの代表的児童文学作家アストリッド・リンドグレーンのあたらしい顔が日本初上陸!

 原作は意外なことに童話ではなく『わたしたちの島で』というテレビシリーズ。リンドグレーンが脚本を手がけた。エピソードを絞り込んで映画化されたのが1964年、そこから50年の歳月を経ての日本公開となった。バルト海に面した“ウミガラス島”(ロケ地:ノルエーラ島)で雑貨屋を営む一家の末っ子チョルベンと仲間たちが繰り広げるひと夏の冒険物語の始まり始まり~♪

chorben-550-2.jpg チョルベンの一番の友だちはセントバーナードの“水夫”さん。アルプスの少女ハイジに登場するヨーゼフそっくりの大型犬である。こまっしゃくれて大人相手にもひるむことなく切り込んでいくチョルベンは周囲の愛情と自然の恵みを一身に受けて育った元気いっぱいの女の子。海に落ちてもへっちゃら!何故って水夫さんが必ず助けてくれるから。遊び仲間はお話好きのスティーナとちょっとひ弱なペッレ。ある日、三人の前にアザラシの子どもがやってきた。海を渡ってきたから名前は“モーゼ”にしよう!とみんな夢中。でも、そんなモーゼが奪われそうになったから大変。モーゼ奪還のため、チョルベンたちの奮闘が始まる!

 50年も昔に製作されたにも関わらず、まったく古びていない。なんと言ってもチョルベンが魅力的なのだ。それは決して今の時代の子役のような可愛さではない。口は達者だけど、どこかズッコケていて垢抜けないのだ。体型もずんぐり、だけど何とも憎めない。

子どもの可愛さってこういうところだよなぁと改めて気づく。何年か前にヒットした写真集「未来ちゃん」もそうだった。こちらは美少女だが、大胆に鼻水をたらした姿が昭和を感じさせ、何故か平成世代にも新鮮な郷愁をもたらすのだ。

chorben-3.jpg さて、三人が始めたのは大人の世界への挑戦だ。ときに手助けもあるが、あくまでも主役は子ども。最後まで子どもの目の高さで語られ、大人主体になっていかないところがこの作品のもっとも痛快なところだ。自分で考え、経験を通してたどり着いた結論にこそ重みがある。それは自分の手でつかみとった実感が伴うから。そんな体験をたくさんした三人の姿は、物語の最後、たしかに一回り大きくなったようだ。夕闇のなか浮かび上がるシルエットは人も動物もすべてが輝いて愛おしくなる。

 また、漁村の素朴な暮らしぶりが楽しい。食事の前にテーブルを家族全員で持ち上げてドン!と音をさせるシーンや、バスタブをキッチンに置いて行水するシーン。かつて漁に使用されたガラス製の浮き玉(ブイ)も効果的に使われている。レトロモダンな家具や女の子たちのファッションも今の時代にも十分通用するセンスの良さだ。2015年からは20クローナ紙幣がリンドグレーンとピッピのデザインになり、ブサかわいいと評判のチョルベングッズも発売される。ストーリーはもちろん、北欧の風俗も垣間見れるチョルベンワールドにこの夏、はまる人続出の予感!           

 (山口 順子)

公式サイト⇒ http://www.suifusan.com/

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