『わたしは生きていける』
原題 | How I Live Now |
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制作年・国 | 2013年 イギリス |
上映時間 | 1時間41分 |
監督 | ケヴィン・マクドナルド |
出演 | シアーシャ・ローナン,ジョージ・マッケイ,トム・ホランド,ハーリー・バード,アンナ・チャンセラー |
公開日、上映劇場 | 2014年8月30日(土)~有楽町スバル座、ヒューマントラストシネマ、TOHOシネマズ梅田 ほか全国順次公開 |
~近未来SF的状況で描かれる少女の変化~
デイジーは,亡母からの呪縛と父に対する反発のため,自分の周囲に壁を作って閉じ籠もっていた。ニューヨークの父から追い出されるように,あるいは逃れるように,ヒースロー空港に単身で降り立つ。空港では“パリで爆発事故”と報道され,従弟アイザックの運転する車で伯母の家に向かう道中でも軍隊が出動して物々しい雰囲気だ。人懐こい従妹パイパーは煩わしいが,鷹を伴って超然と現れた従兄エディには心惹かれるものを感じる。
デイジーに扮するのは「ビザンチウム」や「ザ・ホスト美しき侵略者」などのシアーシャ・ローナンだ。彼女がデイジーの内面とその変化をしっかりと伝えてくれる。釣りに誘われても興味ないと連れなく,泳ぎに行くと言われ,泳ぐのは嫌いと言いながらエディに付いて行く。従兄弟らとの生活に溶け込み,生きる喜びを見出していく様子が,前半で丁寧に描かれる。美しい自然に包まれて生活する中でデイジーも少しずつ輝きを増していく。
ところが,ロンドンで核爆発が起こり,第三次世界大戦が勃発し,先が見えなくなる。デイジーは,自分の行く先々で悪いことが起こると思い,またマイナス思考になるが,以前の彼女とは違っていた。米国民に交付された”緊急渡航文書”を燃やすシーンで,エディらと共に生きるという彼女の固い決意が示される。「何があってもここに戻れ」というエディの言葉を糧とし,容赦ない現実が覆い被さる中,生きる希望を見据えて進んでいく。
空高く舞う鷹を映すショットが何度か差し挟まれ,違った表情を見せる。デイジーとエディが引き離されるときには痛みを増幅させる。だが,2人のロマンスが描かれるシーンとデイジーが失いかけた希望を取り戻すシーンでは,音楽を担当したジョン・ホプキンスの“The Hawk”という美しい曲が流れ,自由と希望の広がりを体感させてくれる。周囲の状況がデイジーの見聞する範囲に限られることで,ラストでは一層大きく彼女が輝いている。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.howilivenow.jp/
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