『マダム・イン・ニューヨーク』
原題 | English Vinglish |
---|---|
制作年・国 | 2012年 インド |
上映時間 | 2時間14分 |
監督 | 監督・脚本:ガウリ・シンデー |
出演 | シュリデヴィ、アディル・フセイン、アミターブ・バッチャン、ナヴィカー・コーディヤー、メーディ・ネブー、スジャーター・クマール、プリヤ・アーナンド |
公開日、上映劇場 | 2014年6月28日(土)~シネスイッチ銀座、7月26日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、8月2日(土)~元町映画館 ほか全国順次公開 |
~「ロマンスより尊重されたい!」マダムの人権宣言にエールを!~
最近のインド映画から目が離せない!今年は、『神さまがくれた娘』に始まり、『デリーへ行こう!』や『めぐり逢わせのお弁当』『バルフィ!人生に唄えば』と、マサラムービーだけではないインド映画の底力を感じさせるヒューマンドラマの秀作が続いている。そして、新人女性監督ガウリ・シンデーの長編デビュー作『マダム・イン・ニューヨーク』は、女性軽視のインド社会において、やんわりとコミカルに、華やかな中にもしなやかに、女性の地位向上を謳いあげた、“あっぱれマダム”の飛躍の物語である。
主人公のシャシを演じるのは、15年ぶりのスクリーン復帰となるシュリデヴィ。インド映画史100年の中でもNo.1女優と謳われるほどの美貌と人気ぶりは、50歳になった今でも変わらない。むしろ成熟した分全体的に引き締まり、余分なものを削ぎ落としたような清楚な可憐さがある。そんなシュリデヴィが着こなす数々のサリー姿もまた、上品で美しい。原題の「English Vinglish」と同名の主題歌の軽快なサウンドにのって、ニューヨークの街で花開いたマダムの“人権宣言”は、世界中の女性を勇気付けるに違いない。
【STORY】
子供2人とビジネスマンの夫とお姑さんの5人家族で暮らす専業主婦のシャシは、古風な良妻賢母さながら、家族のために尽くす毎日を送っていた。そんな彼女が一番得意とする料理「ラドゥ」というお菓子は、贈答用にも使われるほどの人気で、プロ級の腕前だった。だが、英語ができないことで、娘はシャシが学校に来ることを嫌がったり発音をバカにしたり、夫も「ラドゥ作りしか能がない」と人前でからかったり、その蔑んだ態度に嫌な思いをしていた。ある日、ニューヨークに住む姉から姪の結婚準備の手伝いを頼まれ、家族より1か月早くニューヨークへ旅立つことになる。
シャシは、英語が理解できないばかりに不安でパニックになり、カフェで大混乱を引き起こしてしまう。つくづく英語力を身に付けたいと痛感し、「4週間で英語がマスターできる!」という看板に引かれて、家族には内緒で英会話教室へ通うことに。そこにはいろんな国からニューヨークにやって来た年齢も様々な生徒たちがいた。中でもフランス人シェフのローランは、シャシが放つエレガントさに惹かれて、熱い眼差しを送るようになる。だが、シャシはローランとのロマンスに付き合っている暇はない。卒業まであとわずかという時に、家族が早めにニューヨークに来てしまい、通学できなくなる。しかも、卒業試験の日は姪の結婚式と重なってしまい……。
女は結婚すると、夫の名字で「誰々さんの奥さん」とか、子供の名前で「誰々ちゃんのお母さん」と呼ばれるようになる。自分の存在が急にかすんで見えてさみしく感じることがある。ましてや子供からバカにされたり、夫にも軽んじられたりするなんて、言語道断! それにしても、シャシが、ローランからのラブコールによろめくことなく、「ロマンスより尊重されたい!」と健気に意志を貫く姿は気高く、増々美しく見えた。普通なら、「自分の気持ちに正直に生きたい!」と新しい恋に走るのがオチだが、そこがこの映画の後味のいいところだ。誰からも感謝されることなく、母として妻として生きてきたシャシが、「一人の人間として尊重してほしい」と唇を噛みしめる姿にこそ、本作のテーマが込められていたようだ。
*家族にいつも疲れた顔を見せてはいませんか?女性は、古代より豊穣のシンボルであり、家庭の中でも太陽として崇められてきたのです。“天照大神”になったつもりで(!?) 、笑顔で周囲を照らしましょう。そんな颯爽とした気分にしてくれる嬉しいインド映画に出会えて、本当にラッキーだと思った。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://madame.ayapro.ne.jp/index.html
(C)Eros International Ltd