映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『トランセンデンス』

 
       
tran-550.jpg
       
作品データ
原題 TRANSCENDENCE
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間59分
監督 ウォーリー・フィスター 製作総指揮:クリストファー・ノーラン
出演 ジョニー・デップ、モーガン・フリーマン、ポール・ペタニー、レベッカ・ホール、キリアン・マーフィ、ケイト・マーラ他
公開日、上映劇場 2014年6月28日(土)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都他全国拡大ロードショー ※6月27日(金)先行上映あり

~本質は夫婦愛。人間VS人工知能の近未来を疑似体験~

 

tran-2.jpg

SFは決して途方もない未来のことを語る絵空事ではなく、ほんの少し未来の、ほぼ確実にあり得ることを垣間見る時代になった。永遠の命、肉体の再生など、人間の永遠の欲求は今まで何度もSFのモチーフとなってきたが、本作ほど冷静かつ説得力のある描写はなかった。そして本作ほど夫婦の愛に重点を置かれたSFもなかったのではないだろうか。『インセプション』、『バッドマン』シリーズのクリストファー・ノーランが製作総指揮を務め、ノーラン組の撮影監督として数々の賞に輝いたウォーリー・フィスターが満を持しての監督デビューを果たした注目作。デジタルと相性の良いSFであっても、35ミリフィルムで撮影を敢行、深みのある映像美はフィスタ―監督のこだわりがにじみ出ている。
 

tran-3.jpg

人工知能PINN開発の権威でありながら、自らは郊外の家で妻エブリン(レベッカ・ホール)と静かな生活を望んでいた科学者ウィル(ジョニー・デップ)。だが、反テクノロジーを唱える過激派グループRIFTに狙撃され、絶命してしまう。研究パートナーだったエブリンは、愛する夫の意識をPINNへインストールし、ウィルはオンラインの中で生きる存在となった。2人の友人で科学者のマックス(ポール・ペタニー)は、ウィルの意志によりPINNの能力が人類を脅かす力を持つことを危惧するが・・・。
 
個性的な役作りで観客を魅了してきたジョニー・デップが、コンピューター脳となって画面の向こうから生きている妻に愛を語りかける。『ノイズ』(99)以来のSF作品出演となるジョニー・デップは、ウィル役を今までになく自然に、そして終始変わらぬ妻への愛ゆえに思わぬ暴走を犯してしまう男心をしなやかに演じている。意識だけコンピューターに残った男が、妻に触れたいがために重病人にナノテクノロジーを駆使した再生医療を施すと同時に、自らの意識をインストールし、他人の体を借りて妻に触れようとする。しかし意識や声は夫でも外見は別人の男たちが迫ってくる姿は、エイリアンの襲来そのもので、妻にとっては脅威にしかなりえない。行き過ぎた愛が起こした悲劇の始まりだ。
 

tran-4.jpg自らを「全てを超越した全能の神」と思うまでに進化を遂げたウィルは、自らの意志を空気中に放出させ、雨水により世界に広げていく。冒頭に瑞々しく煌めきながら落ちていったしずくは、全ての予兆だった。時代ごとに進化していくコンピューターやインストール時のSFらしいビジュアルだけでなく、何気ない日常や詩的な描写を取り入れ、感情に訴えかける映像が今と地続きの感覚を呼び起こす。人類を守るために妻エブリンが下す究極の決断は、人類を守るために何も決断できない我々への警笛のようにも見えた。コンピューターがガラクタと化した新しい世界が我々の近未来なら、人類はそこからやり直せるかもしれない。(江口由美)

 
公式サイト⇒http://transcendence.jp/
(C) 2014 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.