『her/世界でひとつの彼女』
原題 | Her |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 2時間6分 |
監督 | スパイク・ジョーンズ |
出演 | ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン |
公開日、上映劇場 | 2014年6月28日(土)~新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、TOHOシネマズ西宮OS、MOVIX京都、ほか全国ロードショー |
~人工知能と恋を交わす、大いにあり得る切ないラヴストーリー~
パソコン漬け、スマホ漬けの現代。時期を同じくして、AI(人工知能)を扱った本作と『トランセンデンス』の2本が公開されることは、我々の生活に、ITがますます進化した形で影響を及ぼしてくるだろうという推察を招くようだ。違う持ち味の2作品で、どちらも面白かったのだが、本作では、スパイク・ジョーンズ監督の、その手さばきに見とれた。ユーモラスで、可愛くて、でも、胸をきゅきゅっと鳴らすような切なさがある。ネット中毒の中年版“ボーイ・ミーツ・ガール”と言ってもいいだろう。
主人公のセオドアは、手紙の代筆ライターで、妻とはただいま離婚調停中。妻への気持ちを整理できず、何となくさびしい一人住まいだ。そんな彼が、とびっきりの“彼女”と出逢った。それは、人間的な感性や個性を持った最新のAI型OS、名前はサマンサ。画面の奥から日々のさびしさを埋めてくれるかのようなサマンサの声に熱を上げていくセオドアは、携帯端末にサマンサをインストールし、いつでもどこでも彼女との会話を楽しみ始めるのだが…。
セオドアとサマンサの恋人のような関係。肉体を持たないサマンサとの疑似メイクラヴ。考えてみれば、AIとまでいかなくても、恋愛をテーマにしたゲームソフトなどで、こういう思いを味わっている人はすでに現存する。愛は別物だけど、恋のほうはイメージだけでも十分成立するのだなあと改めて感じた次第。だけど、物語は破局を用意している。一方的な断絶、その時のセオドアの慌てふためく様子、最も大事なものを奪われた時の絶望感は、相手が人間でなくとも同じなのだ。
スカーレット・ヨハンソンは、声だけの出演で、第8回ローマ国際映画祭最優秀女優賞に輝いたというから驚く。実際、セクシーでありながらキュートで知的、セオドアに対する気遣いなど、一般男性が夢見る“理想の恋人像”なんだろうなと思う。人間とマシンの壁をさりげなく描いたエンディングは、しみじみとして、どこか爽やかでもあった。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://her.asmik-ace.co.jp/
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures