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『ヴィオレッタ』

 
       

violetta-550.jpg『ヴィオレッタ』

       
作品データ
原題 My Little Princess 
制作年・国 2011年 フランス 
上映時間 1時間46分
監督 監督・脚本(共同):エヴァ・イオネスコ
出演 イザベル・ユペール、アナマリア・ヴァルトロメイ、ジョージェット・リーフ、ドニ・ラヴァン、ジェスロ・ケイヴ、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン
公開日、上映劇場 2014年6月14日(土)~第七藝術劇場、京都シネマ、7月~神戸アートビレッジセンター ほか全国順次公開

 

~これはアートか? 児童ポルノか? 娘を喰いものにした母親のエゴか?~

 

violetta-2.jpgのサムネイル画像 親が我が子の裸の写真をネット上で売り物にする話はよく聞く。勿論、児童ポルノ、児童虐待につながる違法行為だ。1977年、ルーマニア出身のイリナ・イオネスコが撮った実の娘のヌード写真集『エヴェ(鏡の神殿)』が発表され、ヨーロッパやアメリカ、日本などでセンセーションを巻き起こしたという。エヴァが4歳から13歳までを撮ったヌード写真集。そのエヴァが、その後女優になり、34年経ってから自ら監督してこの映画を撮った。そう、エヴァ・イオネスコ監督自身の衝撃の自伝的映画なのだ。

violetta-5.png エヴァをヴィオレッタ(『椿姫』と同名)という役名にして、胸が大きくなる前の幼さの残る12歳の頃に設定している。実際には幼い頃からもっと過激なポーズをとらされたようだが、それを実際映像化するとなると、子役に対して酷だと考えたらしい。その辛さはエヴァ自身が一番よく理解しているからだろう。本作は、アートのために児童ポルノまがいのことをさせられた少女の実状を告発するための映画ではない。母は本物のアーティストを目指して娘を利用し、娘はそんな母親の期待に応えながらも成長とともに反発していく、母と娘の葛藤こそ、本作のテーマと言えるだろう。

violetta-3.png 母親を演じたイザベル・ユペールが凄い。『主婦マリーがしたこと』(‘88)、『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(‘95)、『ピアニスト』(‘01)、『ジョルジュ・バタイユ ママン』(‘04)等と、狂気じみたクールビューティで強烈な印象を残してきたイザベル・ユペール。彼女がヴィオレッタの母親役だと聞いて、大いに納得すると同時に急に本作への関心が高まった。育児放棄の果てに、「これはアートなの!」「凡人になりたいの?」「あなたを愛してるわ」とか言っては、嫌がる娘を強引に撮影に引き込む辺りは、実に恐ろしい!

violetta-4.jpg 一方、ヴィオレッタを演じたアナマリア・ヴァルトロメイはルーマニア出身の子役。美しいブロンドの髪に大きな瞳が魅力的な美人。何ヶ月もかかってオーディションしても主役が決まらなかったのが、アナマリアの父親がルーマニアからネットで応募してきて、その美しさに監督は即決したという。確かに、実際のエヴァによく似ている。今では、家族ぐるみでフランスに移住してきたというから、イオネスコ母娘と同じ経歴を辿っていることになる。

 経済的基盤を持たないルーマニアからの移民家系のイリナ・イオネスコが、自由な芸術風潮が高まった1970年代に、画家としてもモデルとしても成功せず、ゴージャスなヴィンテージファッションにデフォルメされた娘の妖艶な写真を撮ることで、写真家として認められていく。経済的にも潤ってきて、やっと掴んだ職業となった。娘もそんな母を助けたいという思いはあっただろうが、娼婦のような恰好で登校しては浮きまくり、いじめの対象となる。孤独な子供時代だったと想像できる。

 我が子を不特定多数の性的視線にさらすこと自体、虐待と言えるだろうが、この母親にとって美の表現手法として娘を被写体にしたに過ぎなかったのかもしれない。アートと狂気の紙一重にいた母親と、そこから離脱する娘の成長を、繊細にかつファッショナブルに描写したエヴァ監督デビュー作は、再びセンセーショナル旋風を巻き起こしそうだ。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://violetta-movie.com/

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