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『GF*BF』

 
       

GFBF-550.jpg『GF*BF』

       
作品データ
原題 女朋友。男朋友 GF*BF
制作年・国 2012年・台湾
上映時間 1時間45分
監督 監督・脚本:ヤン・ヤーチェ
出演 グイ・ルンメイ、ジョセフ・チャン、リディアン・ヴォーン、チャン・シューハオ、レナ・ファン、ティン・ニン
公開日、上映劇場 2014年6月7日(土)~シネマート心斎橋、シネマート六本木、今夏、京都みなみ会館、元町映画館他

 

~笑顔が輝かしいほど、切なさが心にしみる~

 

GF-BF-2.jpg 青春が輝かしく、笑顔が美しいほど、その後の人生の痛み、悲しみが切々と迫り、涙を禁じ得ない。27年の歳月にわたる台湾の社会情勢の変化の中で、3人の男女の友情と愛を切なくも生き生きと描いた青春映画の快作。仲良し高校生の美宝(メイバオ)、忠良(チョンリャン)、心仁(シンレン)。美宝は忠良が好きで、心仁は美宝が好き。忠良は…。美宝は想いを打ち明けられないまま心仁の告白を受け入れ、つきあい始めるが…。

GF-BF-4.jpg 映画は、2012年、中学校の朝礼で、短パンをはきたいと一斉にスカートを脱ぎ捨て、抗議運動をする女の子たちの楽しげな姿で始まる。計画した双子の少女の父親が忠良で、校長室に呼び出される。書類上は兄でも実際は父だと忠良が力強く答えるシーンで、タイトルインして過去へと遡っていく。1985年、長い戒厳令下で、言論や集会の自由が制限され、高校でも厳しい校則に縛られる中、部活を楽しみ、自由を求めてささやかな抵抗を繰り返す3人。1990年、台北の大学に進んだ忠良と心仁に会いに来た美宝は、何千人もの学生が集い民主化を求める集会に共に参加する。1997年、有力者の娘婿となった心仁と、それぞれ人に言えない悩みを抱えた美宝と忠良とが再会。そして2012年へと戻る…。

GF-BF-3.jpg 3人の俳優たちの演技がすばらしい。美宝は勝気で、二人を引っ張っていくしっかり者。それでいて、シャイで傷つきやすく、相手の幸せを思ってそっと身をひく優しさゆえに、幸せをつかめずにいる。グイ・ルンメイの笑顔が、はじけるほどに明るく輝かしいほど、切ない運命が痛々しい。ルンメイの繊細な表情は、言葉にできないつらさ、寂しさを伝え、観る者の心を強くとらえて離さない。そんな美宝をじっと見守り、あたたかく包み込むような忠良を演じるのはジョセフ・チャン。寡黙さの中にさりげない優しさが伝わり、照れたような表情が魅力的。心仁を演じるリディアン・ヴォーンはキュートで不安定で目を離せない。

 高校時代、台湾南部の高雄で、緑あふれる渓谷へと3人がバイクで出かけ、川で泳いだり、夜道を歩いたりする姿が生き生きしていて、心に残る。忠良の家の家業の花摘み(玉蘭。モクレン科ギンコウボク)を夜半、懐中電灯の灯りの中で手伝うシーンもいい。青春時代、輝いていた頃の思い出は尊い。あの頃があるから、今があり、今ここに自分がいる。青春の思い出、友情が、今の自分にとってかけがえのない支えになっていることが、孤独や痛みに耐える美宝の表情から伝わり、彼女の“選択”は深く静かな感動を呼ぶ。そんな美宝の思いを忠良が受け継ぐ。美宝と忠良の決心を直接描くのでなく、2012年の忠良の家族の姿を描くことで、さりげなく伝える脚本の見事なこと。双子の少女たちが明るく元気なほど、美宝の選択した“幸せ”の重みが伝わり、忠良との友情の絆の深さが胸に迫る。3人のうちの1人でも幸せになれたらそれでいいという忠良の言葉が深い余韻を残す。エンディングの「家」(羅大佑)という歌を聴きながら、1997年から2012年までの映画では描かれなかった歳月の重みが心にどっと押し寄せ、きらきらした彼らの青春の姿と響きあって、切なさと痛みの入り混じった感銘がいつまでも消えない。2013年の大阪アジアン映画祭でも大好評を博した本作。音楽もすばらしく、ぜひスクリーンで観てほしい。

(伊藤 久美子)

★ヤン・ヤーチェ監督インタビューは⇒ こちら
★公式サイト⇒ 
http://www.pm-movie.com/gfbf/

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