『サード・パーソン』
原題 | Third Person |
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制作年・国 | 2013年 イギリス |
上映時間 | 2時間17分 |
監督 | 監督・脚本・製作:ポール・ハギス |
出演 | リーアム・ニーソン、オリヴィア・ワイルド、エイドリアン・ブロディ、モラン・アティアス、ミラ・クニス、ジェームズ・フランコ、マリア・ベロ、キム・ベイシンガー他 |
公開日、上映劇場 | 2014年6月20日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
~周到に練られた三つの物語、謎解きの着地点に立っても長く残る余韻~
ああ、好きだなあ、こういうのって。絡み合う人間模様、サスペンス小説のページをめくっているかのようなドキドキ感。三つの都市で展開する三組の男女のドラマが、クライマックスに向けて少しずつ収斂していく。エンディングに至るまでご親切な説明などないのだが、「なるほど、そういうことか!」という気づきがやって来る。それでも、“そういうこと”には、少々バージョンの違う“ああいうこと”かもしれないという3つの可能性が考えられ、それらが何度も私の頭を去来する。想像力を刺激する映画の虚構性、それが胸を騒がせるのだ。
パリの高級ホテルにこもって、最新作を執筆しているピューリッツアー賞受賞作家マイケルと、秘密を抱えつつ大胆な行動に出る若き愛人アンナ。ローマで産業スパイのような仕事をしているアメリカ人男性スコットと、密輸業者から娘を取り戻そうと躍起になっている美貌のロマ族の女モニカ。ニューヨークで、6歳の息子の親権をめぐり、元夫のリックともめている不運な女ジュリア。何の関連もなさそうな彼らの物語が、並行して語られていくのだが、だんだんと「おや?」という疑問が生じてくる。終盤、映像のある意外な動き、白いバラや携帯電話、小さなメモの走り書きなど、小道具の使われ方にまで目を凝らしていると、物語の“真相”がひょいと顔を出す。
『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本、『クラッシュ』の脚本&監督でめきめきと頭角を現したポール・ハギス監督は、本作のために50回以上も草稿を書いたというから凄い。細部にまで伏線を張り、何度も何度も練り直し…その過程が、主人公の作家の存在と重なってくる。この映画の謎解きは明かせないが、数回出てくる“Watch me”というささやき、原題のThird Personが「三人称」を意味することに注意を払っていたほうがいい。実績のある素晴らしい演技陣にも恵まれ、見応え十分でありながら長さを感じさせない。もう一度、頭から見直してみたくなる、実に興味深い作品である。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://third-person.jp/
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