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『渇き。』

 
       

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作品データ
制作年・国 2014年 日本(R15+)
上映時間 1時間58分
原作 深町秋生著『果てしなき渇き』宝島社刊
監督 中島哲也
出演 役所広司、小松菜奈、清水尋也、妻夫木聡、橋本愛、二階堂ふみ、國村隼、黒沢あすか、青木崇高、オダギリジョー、中谷美紀
公開日、上映劇場 2014年6月27日(金)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条他全国ロードショー ※6月27日(金)~7月4日(金)の8日間、学生早割1000円キャンペーンを開催
 

~ヤバすぎる!?中島哲也版『そして父になる』~

 
あまりにものドギツさと、登場人物誰にも共感できない、ロクデナシなキャラクターの揃いぶりに舌を巻く。第3回「このミステリーがすごい!」大賞の深町秋生著「果てしなき渇き」を、『告白』の中島哲也監督が実写化。仕事人間だった元刑事が、謎の失踪を遂げた一人娘の行方を追い、驚愕の事実に辿りつくバイオレンスミステリーだ。役所広司をはじめ妻夫木聡、オダギリジョーらのベテランから、今回ヒロインに抜擢された小松菜奈や、同級生役清水尋也といった若手まで、それぞれがギラギラとその存在感を焼き付ける。
 

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警察官だった藤島(役所広司)は、妻の不倫相手に対する傷害事件を起こし、警備員をしながら自堕落な生活を送っていたが、元妻(黒沢あすか)から娘の加奈子(小松菜奈)が突然姿を消したと連絡を受ける。仕事で全く顧みなかった優等生の娘、そしてまだ愛している妻と全てをやり直したいと願いながら、加奈子探しに奔走する藤島だったが、妻との溝は埋まらず、暴力を振るうばかり。一方、加奈子の友人から思わぬ事実が次々と明るみになっていく。
 
とにかく目を奪われるのは、役所広司演じる藤島の罵声と暴力でしか自分の気持ちを伝えられない不器用さ。その根底には仕事や自らの暴力が家庭を崩壊させてしまった後悔の念が渦巻いている。ケンカ上等の無茶苦茶な独自捜査を進める中で、娘が同級生の自殺に端を発し薬物、売春に手を染め、自分のみならず周りも巻き込み、ヤバい連中から命まで狙われていることを知る。娘の正体が見えてきた藤島は、むしろ意気揚々と、娘と再会できるまで突っ走り続けるのだ。どんなクズでも血を分けた娘、何も知らないより、辛い事実でも娘の闇をも引き受けたいという父親の気迫を感じる。
 

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一方、加奈子が堕ちていく様子は、『不思議の国のアリス』を引き合いに出しながら、小松菜奈の透明感と空虚感が混じった独特のファンタジーなタッチで、軽やかに描かれる。相手の心を揺さぶる優しい言葉を掛けながら、その人生を無茶苦茶にする悪魔と化した加奈子の周りは常に血の匂いがするし、いじめられっ子のオレ(清水尋也)が加奈子に恋をし、振り回される様子も残酷極まりない。しかし、それらのシーンが思いっきりカラフルで、刺激的で、畳み掛けるようにやってくるので、観ているこちらが醜態なのか何なのか麻痺してしまう。これぞ、“中島哲也マジック”だ。
 

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結局加奈子がなぜそこまで堕ちていったのか、その動機を明確に示されることはない。藤島が娘に対して働いた暴力が引き金になったかもしれないが、それだけではないだろう。大人も子どもも皆身勝手で、心の中が空っぽで、自分だけが可愛くて、欲望のままに生きている。そんな、クズ人間の渇き切った心が、彼らが流す血しぶきに滲み出てくるような人間の闇全開エンターテイメントだ。心して臨むべし!
(江口由美)
 
公式サイト⇒http://kawaki.gaga.ne.jp/
(C) 2014「渇き。」製作委員会