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『観相師-かんそうし-』

 
       

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作品データ
原題 観相
制作年・国 2013年 韓国
上映時間 2時間19分
監督 ハン・ジェリム 
出演 ソン・ガンホ、イ・ジョンジェ、ペク・ヨンシク、チョ・ジョンソク、イ・ジョンソク、キム・ヘス
公開日、上映劇場 2014年6月28日(土)~シネマート新宿、シネマート六本木、シネマート心斎橋他全国順次公開
 

~見事な“顔力”合戦! 観相の達人が読み取った反逆の印~

 
 演技のみならず、顔のインパクトにかけてはこの人の右に出る者はいない韓国の名俳優、ソン・ガンホ。彼が人の顔つきや表情から、相手の性格や運命を読み解いてしまう「観相師」役を演じるというだけで興味をそそられる人も多いだろう。1453年、実際に起きたクーデター事件をもとに、歴史に翻弄された天才観相師とその息子の運命を重ねて描いた歴史ドラマ。何度も笑いが起こる前半と、運命が暗転する後半のメリハリが効いており、魅力的なオリジナルキャラクターが活きている。
 

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 15世紀半ば、朝鮮王朝時代。名家の出身でありながら、今は田舎で足が不自由な息子ジニョン(イ・ジョンスク)、妻の弟ペンホン(チョ・ジョンソク)と暮らしていたキム・ネギョン(ソン・ガンホ)。芸奴ヨノン(キム・ヘス)に観相師としての才能を見込まれたネギョンは、都にのぼって、ペンホンと観相をはじめる。ある日、宮廷殺人事件の真犯人を言い当てたネギョンは、「トラ」の異名を持つ宮廷高官キム・ジョンソ(ペク・ヨンシク)と運命的な出会いを果たし、人事官に抜てきされる。一方、家を飛び出していたジニョンは、父の反対にも屈せず宮廷に仕官し、官史への夢を叶えようとしていた。
 
 田舎から人生の再起を図ろうと都にやってきたネギョンとペンホンの漫才のようなやりとりが絶妙だ。『建築学概論』で一躍人気者になったチョ・ジョンソクの飄々とした演技は、ソン・ガンホと息がぴったり。どんどん成功し、ついには模範の芽を持つ者を観相で見極めるように依頼されるまでになりと、ここまでは軽妙なネギョンのサクセスストーリーだが、敵は一枚上手だった。残忍な「オオカミ」の相を持つ首陽大君が潜んでいたことに気付かなかったことが、歴史を変えていく。イ・ジョンジェ演じる野心に満ちた首陽大君のただならぬ雰囲気に、ネギョンが逆賊の相を観たとき、既に時の実権は若き皇帝へ引き継がれていたのだ。

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 後半はまさに「トラ」VS「オオカミ」の闘い、そしてソン・ガンホVSイ・ジョンジュの演技合戦に目を奪われる。また、『リターン・トゥ・ベース』の新星イ・ジョンソクが、最後まで父を信じ、夢を追い続けた純粋な息子を儚く演じ、悲劇がより際立つ。歴史の転換期をドラマチックに描くだけでなく、都でひと花咲かせるつもりが、権力争いに巻き込まれた観相師の抗えない人生を、緩急うまく取り混ぜながら描いてみせた。最後にネギョンがみせた苦痛の顔は、最愛の息子に訪れる運命を見抜きながら守れなかった無念さが滲み出ている。さすがの名観相師も自分の運命が見抜けなかったのは、皮肉という他ない。
(江口由美)
 
 
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