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『メモリー First Time』

 
       

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作品データ
原題 First Time  (第一次)
制作年・国 2012年 香港=中国 
上映時間 1時間43分
監督 ハン・イエン
出演 アンジェラベイビー、マーク・チャオ、ティエン・ユエン、チャン・シャン、シンディ・ユェン
公開日、上映劇場 2014年6月21日(土)~シネマート六本木、7月5日(土)~シネマート心斎橋、今夏元町映画館他全国順次公開
受賞歴 ※第8回大阪アジアン映画祭特別招待作品部門出品作/Special Forcus on HongKong出品作品
 

~記憶を失う女と記憶に囚われる男が織りなすファンタスティックな物語~

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 韓国映画『アメノナカノ青空』(03)を大胆にリメイク、新しい発想で難病の主人公と、主人公の前に突然現れるかつての同級生との恋とその真実をファンタスティックに描く香港映画が誕生した。主人公の心情をイラストで表現したり、街や部屋の装飾も女子が「カワイイ!」と思うようなキュートなものがいっぱい。少女マンガを地でいく恋のはじまりからトキメキ、そして恋の絶頂までを懐かしのカセットテープのA面になぞらえた前半。B面になぞらえた後半では思わぬ展開が待ち受け、最後まで真実が明かされないドキドキ感も味わえる。主演は『ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1』(12)に続き2度目の共演となるアンジェラベイビーとマーク・チャオ。特に、アンジェラベイビーの可憐さは男女問わず虜にされること間違いなしだ。
 
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 難病のためバレリーナの夢を諦めたシーチャオ(アンジェラベイビー)は、薬による記憶障害を抱え、常にカセットテープに今の気持ちを吹き込んでいた。ある日、秘かに恋心を抱いていた同級生のゴンニン(マーク・チャオ)と再会したシーチャオは、母(チャン・シャン)の心配をよそにゴンニンとの距離を縮めていく。ゴンニンのバンドのライブに行ったり、ダンスを再開したり、好きな人と失われた青春を取り戻すかのように幸せな時間を過ごすシーチャオだったが、突然ゴンニンは別れを切り出し、姿を消してしまうのだった。
 

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 シーチャオ視点で描かれる前半(A面)でゴンニンが仕掛けるロマンチックな演出は、恋する女子ならキュンキュンくるだろうが、やり過ぎ感は否めない。しかし、ゴンニン視点で描かれる後半(B面)でその真相が明かされていく。2人の仲を快く思わなかったシーチャオの母とゴンニンの関係や、ゴンニン自身が囚われ続けている母事故死の記憶と父との関係など、シーチャオの初恋を叶えるための優しい嘘は、波紋を巻き起こす。シナリオ通りいかないのが人生ならば、恋もまさにそれでも真実に向かって疾走するのだ。難病の娘を思う母親、恋破れても前を向いて生きるシーチャオ、本当の愛に目覚めたゴンニン。3人の気持ちが一つになったダンスのライブシーンで見せるアンジェラベイビー演じるシーチャオの姿は、生きている喜びを体いっぱいで表現し、艶やかな大人の女性そのものだった。
 
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 ロケ地となった福建省厦門(アモイ)市は、ヨーロッパを思わせるような街並みが美しく、海辺のシーンや坂道を自転車で滑走するシーンなど従来の香港映画にはない風情を味わえるのも魅力だ。恋する男と過去に囚われる男の二面を情感たっぷりに演じたマーク・チャオは弾き語りにチャレンジし、新たな一面を披露している。監督は中国のハン・イエン。香港で大ヒットした本作では脚本も担当、主人公だけでなく周りの人物のエピソードを丁寧に描き、記憶を失う女と記憶に囚われる男を対比させながら等身大のラブストーリーを紡ぎ出した。エンドクレジット終了までが映画だと言わんばかりの演出も心憎い。(江口由美)
 
公式HP:www.pm-movie.com/memory/
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