『一分間だけ』
原題 | 只要一分鐘 A Minute More |
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制作年・国 | 2014年 日本・台湾 |
上映時間 | 1時間52分 |
原作 | 原田マハ(「一分間だけ」(宝島社文庫)) |
監督 | チェン・フイリン |
出演 | チャン・チュンニン、ピーター・ホー、池端レイナ、ディン・チュンチェン、ホアン・ペイジア |
公開日、上映劇場 | 2014年5月31日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、T・ジョイ京都 ほか全国ロードショー |
~乾いた心を潤す愛犬リラのおくりもの~
その愛くるしい仕草やつぶらな瞳に心がとろけそうになる――犬でも猫でも、一緒に暮らし始めると、家族同然の愛着が生まれる。どんな頑なな心も溶かして、本来の優しさや愛情を呼び覚まし、生活に潤いを与えてくれる。そんなペットと若いカップルの心の軌跡を、あふれるような愛情と瑞々しい映像で心を浄化してくれる感動作が、原田マハの同名小説を映画化した『一分間だけ』。台湾のキャストとスタッフを中心にした日本と台湾の合作映画は、今年の大阪アジアン映画祭の「台湾ナイト」でも上映された注目作である。
【STORY】
ファッション雑誌の編集長を目指して頑張っているワンチェン(チャン・チュンニン)は、彼女を献身的に支えてくれる恋人ハオジエ(ピーター・ホー)と同棲中。仕事でクタクタになって帰宅するワンチェンを、美味しい手料理で迎えてくれる優しいハオジエ。ある日、取材先のペットショップで、「この犬もらって下さい」の立札付きのダンボールに入れられたゴールデン・レトリーバの仔犬に出逢う。ワンチェンがハイタッチしようと手を挙げると、仔犬も前足でタッチしてくる。その愛らしさに魅了されて連れて帰り、リラと名付ける。
しかし、アパートはペット禁止の上に、しつけの出来ない仔犬に手を焼いて、一旦はペットショップへ返しに行く。ところが、後ろ髪引かれる思いで店を出るワンチェンに、必死でハイタッチのポーズをとりながら後追いするリラ。「親になるにも努力が必要」と店員に諭され、今度は本気でリラの世話をするふたり。
仕事も辞めるつもりで郊外の広い家へ引っ越すが、思わぬ昇進人事があり、ワンチェンは編集長の夢を叶えるため、より一層仕事に没頭するようになる。リラの世話もハオジエに任せっきりになり、彼の気持ちも考えずに悪態をつくようになる。心が離れてしまったふたりは同棲を解消し、ハオジエはリラを連れて家を出て行ってしまう。ところが、リラは車の窓から飛び降り、ワンチェンの元へ一目散に駆け戻ってくるではないか。
それからというもの、帰りの遅いワンチェンを待ち続けるリラとの生活が始まり、リラをより一層愛おしく感じていくワンチェン。リラと過ごす密な時間を心の支えとし、次第に変わっていく。そんな頃、リラが余命幾ばくもない重病だと判明する……。
犬好きな私は、『ハチ公物語』や『HACHI 約束の犬』『犬と私の10の約束』などのワン公映画につい号泣してしまう。本作では、リラの健気で愛らしさにウルウルするばかりではなく、ワンチェンが母性を呼び覚ますように変化していく様子に我が身を重ねて、「あともう少しだけ生きて!」と心の中で泣き叫んでいた。それまで仕事優先で自分本位にしか考えられなかったワンチェンが、リラと過ごした尊い時間の中で優しい母親のように変化していったように、心が温かな感情で満たされ、何だか優しい気分になれた。台湾人と日本人は、情緒面でも美的感性においても似ている点が多いように思う。だからこそ、台湾映画を見て共感することが多いのかも知れない。これからも台湾映画から目が離せない。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://rira-movie.jp/
(C)2014映画「一分間だけ」