原題 | 3 Days to kill |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間57分 |
監督 | 監督:マックG『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ、『ターミネーター4』、『ブラック&ホワイト』 脚本:リュック・べッソン『レオン』、『Taxi』シリーズ & アディ・ハサック『パリより愛をこめて』 |
出演 | ケヴィン・コスナー、アンバー・ハード、ヘイリー・スタインフェルド、コニー・ニールセン 他 |
公開日、上映劇場 | 2014年6月21日(土)~新宿バルト9、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズ神戸ハーバーランド、109HAT神戸 ほか全国ロードショー! |
~生まじめオヤジが必死に守る正義と家族~
【作品について】
愛娘と電話で話しながらその一方で殺し屋の襲撃をかわし反撃する…。オヤジと凄腕エージェント、二つの顔を同時に使い分ける、こんな器用な仕事が無理なく出来るのは円熟ケヴィン・コスナーぐらいしか見当たらない。
『アンタッチャブル』(87年)以来、ヒーローを演じ続けて来たコスナーの“最後の任務”は、いくつも敵がいる困難なものだった。CIAエージェント、イーサン(コスナー)は病院で「治療も手術も出来ない難病で余命3ヶ月」と診断される。無敵の男も難病には勝てない。身辺整理のためパリのアパートに帰り、別れた妻クリスティン(コニー・ニールセン)を訪ね、時折、連絡を取っていた娘ゾーイ(ヘイリー・スタインフェルド)と再会する。
“最後の時”を家族と過ごそうとするのは、当然の心境だろう。だけど、凄腕エージェントにそんな安逸な時間は許されない。イーサンの前に、謎の女ヴィヴィ(アンバー・ハード)が現れ「余命を伸ばせる試薬がある」と薬をエサに殺しを依頼する。「死ぬか殺すか」究極の二者択一を迫られた男は、娘との関係修復を図りつつ、延命治療と殺しという複雑で危険な任務に飛び込んでいく…。これで最後というのに、なんと面倒な。大物は簡単に引退出来ないのだ…。
【歴代ヒーローの中のケヴィン・コスナー(59歳)について】
コスナーは『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90年)で米アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞など7部門を制覇する華々しいスタートを切り、以来『JFK』(91年)、『ボディガード』(92年)、『ワイアット・アープ』(94年)など“アメリカの正義”を体現してきた。ハリウッドに欠かせない米国代表ヒーローは、かつては主に西部劇から、古くはジョン・ウェイン、スティーヴ・マックイーン、やや遅れてクリント・イーストウッド…。その後を受けたコスナーは型破りだった。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』は過去のヒーローと違い“西部劇的英雄”を否定し、先住民と融和、同化することで謝罪を表現した。自ら監督、主演して見せた“アメリカの良心”でもあった。
『ラストミッション』のいささかくたびれたエージェント、イーサンは、いつも颯爽としていた“アメリカの正義”が、世界情勢の激変ゆえにすっかり疲弊した姿に見えた。それでも、襲ってくる殺し屋から懸命に子供を守る父親像は涙ぐましいばかりだ。“アメリカの正義”などもはや誰も信じていないだろう。スノーデン容疑者がCIAの盗聴工作を暴露して大騒ぎになったのは記憶に新しい。
だがコスナーの生まじめさは『ダンス~』の辺境守備に就く北軍中尉から際立っていた。先住民から“狼と踊る男”と呼ばれるほど溶け込み、部族全滅のスリルで引き込んだ映画には素朴な正義や大西部への憧れがスクリーンからあふれるようだった。決定番はオリバー・ストーン監督『JFK』だ。今も真相不明のケネディ大統領暗殺事件の謎に、ニユーオーリンズの地方検事(コスナー)が敢然と挑む、これぞ正義の男だった。
【生まじめな男ケヴィン・コスナーについて】
人気歌手ホイットニー・ヒューストンの護衛に命をかけた『ボディガード』も生まじめコスナーのはまり役。「世界でも屈指のボディガード」はレーガン大統領暗殺未遂の日に休んでいたことを悔やみ続けるプロだった。ホイットニーとデートで見た映画は黒澤明監督『用心棒』。それほど仕事に打ち込む姿はコスナーにふさわしかった。公開時、かつてスティーヴ・マックイーンと歌手ダイアナ・ロスの共演で映画化話が持ち上がったが、人種問題絡みで中止された、と聞いた。コスナーの極端に短い髪型はマックイーンをほうふつさせた。
そんな生まじめさは時に人に嘲笑されもする。『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』(91年)は歌手マドンナのステージを追ったドキュメンタリーだが、中で彼女のステージを見に来たコスナーが楽屋に顔を出し「上手だった」と感想を述べる。マドンナは「上手だった、って何?」とキレた。 コスナーは正直な感想を語ったのだろうが、マドンナには適当な誉め言葉と映ったのだろう。映画のホイットニーとはわけが違った。彼の生まじめさは、不良性感度が重視されるハリウッドにあって得難い持ち味に違いないが、時につまずく。監督第二作『ポストマン』は『ダンス~』から一転、3時間近い長大な失敗作と酷評された。
だが、ヒーローはくたびれた時、オヤジの顔で本物の味を感じさせた。スパイ映画の先駆け、ジェームズ・ボンドは人間離れした活躍でファンを魅了したが、彼の“家庭生活”が描かれたことはない。マックG監督は「ボンドが家に帰ったら」という興味ある物語を作った。そんな難題にコスナーにぴたりはまった。
娘ゾーイに自転車を買い与え、娘が「父親が教えてくれなかったから乗れない」と不満をもらすと、さっそく指導し、プロムに行く娘にはダンスを教えるなど、普通に父親が出来るあたりがコスナーならではの特性ではないか。「二枚目スターはよれよれオヤジを演じられたら本物になる」という日本映画限定?の“持論”をハリウッドの大物ケヴィン・コスナーが証明した一編だ。
ヴィヴィの依頼は、ウルフと呼ばれる黒幕を探しだし、仕留める仕事だが、女が試薬を打つと副作用で幻覚に襲われる。薬は確かに効くのか、それともまやかしか…マックG監督が『レオン』以来のファンというリュック・ベッソンの脚本(アディ・ハサックと共同)はカーチェイスや激しい銃撃戦など、派手なエージェント:イーサンをしっかりと描いて“オヤジと凄腕”を両立させた。そのバランスが絶妙だ。
(安永 五郎)
公式サイト⇒ http://lastmission.jp
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