『美しい絵の崩壊』
原題 | TWO MOTHERS |
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制作年・国 | 2013年 オーストラリア=フランス合作 |
上映時間 | 1時間51分 R15+ |
原作 | ドリス・レッシング著「グランド・マザーズ」(集英社刊) |
監督 | 監督:アンヌ・フォンテーヌ/脚本:クリストファー・ハンプトン/撮影:クリストフ・ボーカルヌ |
出演 | ロビン・ライト、ナオミ・ワッツ、ゼイヴィア・サミュエル、ジェームズ・フレッシュヴィル、ベン・メンデルソーン |
公開日、上映劇場 | 2014年5月31日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、6月14日(土)~梅田ブルク7、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都、以降、元町映画館ほか全国順次公開 |
~淡く美しく緩やかに崩壊する4人の関係~
オーストラリアの海辺の町を舞台とする,背徳的で危ういラブストーリーだ。ロズとリルは,少女の頃から仲の良い姉妹のようだった。ロズはハロルドと結婚してトムを,リルはテオと結婚してイアンをもうける。息子2人も,少年の頃から仲の良い兄弟のようだった。彼らの少年期にテオが事故で急死し,青年期にハロルドがシドニーに単身赴任する。町に残った2人の母親と2人の息子との間に化学反応が生じて,4人だけの世界が始まる。
イアンからみて,ロズは,母親の親友であると同時に,親友の母親である。だが,幼い頃に父親を亡くしたイアンにとっては,リルとロズが2人の母親だった。一方,彼女たちにとっては,イアンとトムが2人の息子だった。そのため,イアンとロズの一線を越えた関係は,本来なら繰り返すべきものではなかった。これを知ったトムとリルもあっさりと一線を越える。4人は,幸せと怖さが同時に存在する,複雑で微妙な関係を楽しんでいた。
2年後。ハロルドは,シドニーで新しい家庭を築いており,何事もなるようになると悟ったように言う。トムは,父親と同じ演劇の道に進み,シドニーにしばらく滞在し,メアリーと知り合う。4人のバランスが崩れる。リルは,髪を解く手を止めて鏡に映る自分の顔を凝視し,目を伏せる。トムとの関係を絶たないといけないと思いながら,絶つことができない。トムを失う不安に苛まれ,メアリーに嫉妬する。その揺れ動く心理が痛々しい。
トムはメアリーと結婚してアリスを,イアンはハナと結婚してシャーリーをもうける。この健全な2組の3人家族にロズとリルが加わり海岸に向かって歩いていく。最も美しく輝いているシーンだ。そして,ハロルドの言葉が現実化したようなエンディングを迎えることになる。4人は,入り江で不安定に浮かんでいるしかない。社会から隔絶された4人だけの世界で漂泊しているしかない。そこには欲望や情熱は存在せず,背徳の香りもない。
(河田 充規)
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