『チョコレートドーナツ』
原題 | Any Day Now |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間37分 |
監督 | 監督・脚本・製作:トラヴィス・ファイン |
出演 | アラン・カミング,ギャレット・ディラハント,アイザック・レイヴァ |
公開日、上映劇場 | 2014年4月19日(土)~シネスイッチ銀座、 5月10日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、 5月24日(土)~シネ・リーブル神戸、5月31日(土)~シネマート心斎橋にて拡大公開!!! |
~家族のあり方を固定しない社会を求めて~
哀しいけれども,心がほっこりする話だ。ダウン症のマルコが14歳から15歳にかけて2人の愛情を全身に注がれて育った,その温もりがスクリーンに溢れている。チョコレートドーナツに目がなく,ディスコダンスの達人で,ハッピーエンドの話が大好きな少年だった。マルコを最初に愛したのは,バーで口パクのダンサーをしていたゲイのルディだ。彼を愛した弁護士のポールの助言を受け,マルコの監護権を得て,幸せな家族を築き上げる。
舞台は1979年のカリフォルニア州ウェストハリウッドだ。安全で居心地の良い環境の中で,マルコは著しく成長した。彼が描いた”2人のパパ”の絵が微笑ましい。だが,2人がゲイだと分かると,ポールは解雇され,マルコは施設に収容される。ルディは,偽りの人生を捨てて本当の自分になるチャンスだと言うが,社会の風当たりは強かった。ゲイだというだけでマルコを不適切な状況に置いたと判断され,3人の意思は無視されてしまう。
母親には勝てないという台詞がある。マルコの母親は,薬物所持で懲役3年の判決を受けて服役中だった。ルディとポールが憲法の平等原則を基に養子縁組の方向を探ろうとした矢先,母親が仮釈放を受けて監護権回復の申立てをした。薬物乱用者であっても,母親であるというだけでマルコの監護権が与えられる。しかも,2人のパパは裁判所の命令でマルコに近付くことさえできない。どうにも釈然としない中,映像は厳しい現実を伝える。
母親に引き取られたマルコの「ぼくのうちじゃない」という言葉が痛切に響く。母親はマルコより自らの欲望を優先し,簡単に服役前の生活に戻っている。本当の家族を求めて夜の街を当てもなく歩くマルコの姿が痛々しい。ここで家族とは何かという素朴な疑問が浮かぶ。性的少数者の枠に止まらず,夫婦や親子の形態を問う作品となった。人生という舞台で演じる役は様々であっても,適役を演じたいものだ。それが可能な社会を望みたい。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://bitters.co.jp/choco/
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