『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』
制作年・国 | 2014年 日本 |
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上映時間 | 1時間56分 |
原作 | 三浦しをん著『神去なあなあ日常』徳間書店刊 |
監督 | 監督・脚本:矢口史靖 |
出演 | 染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明、柄本明、西田尚美、光石研 |
公開日、上映劇場 | 2014年5月10日(土)~TOHOシネマズ有楽座、新宿バルト9、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都他全国ロードショー |
~テンポよい語り口と爆笑の連続で描く、青春の涙と汗と出会い~
この映画を観終わったら、きっと誰もが「神去村」に行ってみたいと思うにちがいない。山の中の気持ちよい空気が伝わり、そこに住む人たちを魅力いっぱいに描きだす。マムシもいるし、ヒルもいる。携帯は通じないし、決して住みやすくはない。でも、山の眺めは美しく、自然の力が身近に感じられ、なんてすてきなところなんだろうと思わずにはいられない。矢口史靖監督の最新作は、躍動感にあふれ、迫力満点の、とことん楽しい青春映画!
パンフレットの表紙の美女の写真に魅かれ、軽い気持ちで、都会から1年間の林業研修に神去村にやってきた18歳の勇気。過酷な林業体験に耐え、無事研修を終えられるか…。勇気を演じる染谷将太の笑顔がいい。荷物をまとめて寮から逃げ出そうとして、村に住む美人、直紀に出会い、思いとどまる。山での実地研修で、痛い経験、辛い思い、悔しい気持ちをたくさん重ね、いつしか山の仕事に魅かれ、懸命になっていく。チェーンソーで木を切る緊張感。林業は危険を伴う仕事だから、まさに体当たりの連続。移動途中に軽トラックの後ろで山の仲間達と歌う姿もいい。朝いつも寝坊して枕を蹴られていた勇気がどう変わっていくのか観てほしい。
神去村に住む人たちも皆表情豊かで、喜怒哀楽にあふれ、ゆったりと生き生きしている。伊藤英明演じるヨキは暴力的だが根は優しく、光石研とともに、山で働く男として存在感がある。全ての林業シーンを吹き替えなしにこだわり、木の高所で種取りをするシーンでは、30メートル近くある木に、染谷も伊藤ら役者たちも実際に登り、カメラも上がって撮影したという。山の遥か彼方まで見渡せる映像に心打たれた。勇気が初めての現場で足を踏み外す山の斜面のきつさ、1本1本の木の大きさ・重さ、木の断面の匂いと、勇気の体験を通じて、林業の仕事の大変さがリアルに伝わる。と同時に、苗木を植えて切り倒すまで100年かかるという林業のスケールの大きさや、祭りの儀式、習わし、お地蔵さんを通して、山を崇拝し畏敬する、日本人の自然観をも描きこむ。オールロケのみごたえある映像、縦横無尽に動き回るカメラの力、個性豊かな役者たちの身体を張った演技、テンポよく語る矢口監督の語り口に引き込まれ、山での暮らし、「神去村」の世界にすっかり魅了される。
長澤まさみが演じる直紀と勇気の恋の行方も、くっつくようでくっつかないような、さりげなさが余韻を残す。思いきり鼻をかんだり、勇気をひっぱたく直紀が可愛くて切ない。クライマックスの祭りのシーンは、CGをほとんど使わず、実際に大勢のエキストラを集めてやったというから驚きだ。怒涛のような迫力は、ただもう圧巻の一言に尽きる。都会の場面以外は100年後も鑑賞できるようフィルムで撮影されたという製作側の気概が嬉しい。随所にあふれる爆笑シーンは、ぜひ映画館で大勢の観客と一緒に観てほしい。楽しさも倍増するはず。
ラスト、勇気が感じた音、空気、気配、匂いとその表情だけで、セリフをほとんど用いることなく、彼の“決断”を簡潔に描いてしまう見事さ。監督の映像で語る技量に唸った。『ウォーターボーイズ』(01年)を超える青春エンタテインメント映画の傑作が生まれた。
(伊藤 久美子)
※「神去(かむさり)村」は架空の場所。
原作の三浦しをんの小説「神去なあなあ日常」の「神去村」のモデルは、三重県津市美杉村(現在は美杉町)で、映画の主な場面はそこで撮影された。
公式サイト⇒ http://www.woodjob.jp/
(C) 2014「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」製作委員会