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『K2~初登頂の真実~』

 
       

K2-550.jpg『K2~初登頂の真実~』

       
作品データ
原題 K2 - La montagna degli Italiani 
制作年・国 2012年 イタリア 
上映時間 2時間
監督 監督:ロバート・ドーンヘルム(『戦争と平和』『ラ・ボエーム』) 製作総指揮:ノルベール・ブレシャ 製作:マリオ・ロッシーニ 編集:アレッサンドロ・ルチーディ 撮影:ゴゴ・ビアンキ 音楽:パオロ・ヴィヴァルディ
出演 マルコ・ボッチ、マッシモ・ポッジョ、ミケーレ・アルハイク、ジュゼッペ・チェデルナ、ジョルジョ・ルパーノ、アルベルト・モリナーリ
公開日、上映劇場 2014年5月10日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田 にてロードショー

 

~K2初登頂を目指す男たちの非情な闘い~

 

K2-4.jpg 今年は、世界最高峰エベレスト(8,848m)の映画『ビヨン・ザ・エッジ~歴史を変えたエベレスト初登頂~』(6/28公開)と、2番目に高いK2(8,611m)の映画『K2~初登頂の真実~』(5/10公開)と、初登頂にまつわる映画が相次いで公開される。『ビヨン・ザ・エッジ』はドキュメンタリーと再現ドラマで構成された3D映画に対し、『K2』は初登頂へ賭ける男たちの野望と人間模様が8,000m級の山々を背景にドラマチックに展開されて、イタリア映画の底力を感じさせる。

 K2は、パキスタンとチベットとの国境付近のカラコルム山系の最高峰で、ヒマラヤ山系のエベレストに次ぐ世界第2位の高さを誇る山。だが、急峻な山容と、激変する気象環境に、人里から離れた奥地という地理的条件から登山隊のアプローチがとても困難。それゆえ、4人に1人は死亡するほど遭難事故が多く、世界で最も登頂が難しい“非情の山”と言われている。(ウィキペディア参照) そのK2を1954年に初制覇したイタリア隊の初登頂にまつわる衝撃の真実が、60年経ったいま、大パノラマの迫力ある映像と人間ドラマで明らかにされる。


 K2-6.jpg【STORY】
 1953年、ヒマラヤのエベレスト初登頂がイギリス隊によって成功した頃、カラコルムのK2に挑戦したアメリカ隊は失敗に終わった。そこで、イタリアのデジオ教授はK2初制覇を目論み、遠征隊結成を政府に進言する。だが、敗戦国イタリアはとてもそんな余裕などなく却下された。それでも、「国威向上のためにもK2初制覇を目指すべきだ!」というデジオ教授の強い意見が通り、イタリア中から最強のアルピニストが集められることになった。

 厳しい訓練に耐え、精神と身体機能検査を経て12人が選抜される。その中に、後に登頂をめぐる法廷闘争へと発展していくことになる24歳のヴァルテル・ボナッティが含まれていた。女たらしで向こう見ずな行動が目立つ最年少のボナッティは、アルプスでの経験は豊富で、隊の中でもずば抜けた身体能力の持ち主だった。1954年、パキスタン入りする遠征隊。現地では多くのポーターを雇い、カラコルム山系の奥地へと進む。

K2-3.jpg ベースキャンプから9か所のキャンプ地を設営しながら頂上を目指す。だが、8,000m級となると酸素ボンベを運ぶのもひと苦労。ボナッティは最終アタック隊に選ばれたものの、頂上へは2人しか行けない。アタック当日体調の良かった者が初登頂を目指す、という約束で協力し合いながら徐々にキャンプ地を築き上げて行った。ところが、アタック隊のリーダーのコンパニョーニが選んだのはラチェデッリだった。自分より優秀なボナッティの超人的能力を恐れ、名声欲しさに予定していた最終キャンプの位置をわざと変え、ボナッティの登頂を阻んだのだ。それによって、後から酸素ボンベを運び上げてきたボナッティとポーターは、8,000m地点でビバーク(雪中で野宿)するとい大変危険な目に遭う。ボナッティは初登頂という偉業を逃しただけでなく、コンパニョーニの卑怯な仕打ちに深く心が傷つくことになる。


  世界で初めて8,000m以上の14峰を無酸素で制覇した20世紀最高の登山家ラインホルト・メスナーも、1970年のナンガ・パルバット山のルパール壁初登攀を巡る訴訟を長年闘ってきた。『ヒマラヤ 運命の山』(2009年)という映画でも、登山家同士の妬みやライバル心などで妨害され危険な目に遭うことを知った。純粋に山を愛するだけでは済まされない、世界初の名声を求める登山家の野望渦巻く世界を思い知ったものだ。

K2-2.jpg 本作は、対称的な若き登山家ボナッティとラチェデッリのプライベートな側面を描きつつ、初登頂後10年間も成功した二人の登山家の名前を公表しなかった事情が丁寧に描かれている。54年後、イタリア山岳会にボナッティの主張が認められたのも、ラチェデッリの証言があったからだという。歴史上の真実が明かされるまでにあまりにも長い年月が掛りすぎた。改めて、初登頂の偉業にまつわる真実の重みが感じられる映画だ。

(河田 真喜子)

 公式サイト⇒ http://www.mtk2.net/

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