『ファイ 悪魔に育てられた少年』
制作年・国 | 2013年製作 韓国 |
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上映時間 | 2時間05分 |
監督 | チャン・ジュナン |
出演 | ヨ・ジング、キム・ユンソク、チョ・ジヌン、チャン・ヒョンソン、キム・ソンギュン、パク・ヘジュン、イ・ギョンヨン |
公開日、上映劇場 | 2014年4月26日(土)~シネマート新宿、5月3日(土)~シネマート心斎橋ほかで、全国順次公開 |
~冷酷非情な韓国アクション・バイオレンス~
韓国映画のアクション・バイオレンス映画といえば、ハリウッドや日本などとは違った、どちらかといえば異質なテイストがある。その異質さには、容赦のない残虐な感じがあるようだ。もともと韓国映画の日本への流出において、TVドラマと映画では、全く相反するようなタッチの映像作品が入ってきていた。韓流TVドラマではまず描かれない南北問題をポイントに、非情感ある作品が多数作られてきたのである。「JSA」や「シュリ」など。
そして、南北問題ものや戦争・社会派ものが、ある程度鎮静化すると、アメリカや日本なら「R」指定確定の、余りにもエグイというか、それこそ“子供には決して見せられない”凄まじい映画が、次々に登場してくるのである。近親相姦の「オールド・ボーイ」とか、無差別殺人鬼を追う「チェイサー」とか、一種タブー視される内容が平気で映像化される。そして、本作はそんな1本になっている。
アクション・シーンがハリウッド級といえばそうなのだが、微妙に違うのは、爽快なアクションではなく、粘りや重みが心に沈殿するような感覚がある。それは多分、ベースにあるのが、子供が実の父親だと意識せずに銃殺することを発端とした、その設定の違和感からきているように思う。5人組犯罪者が、営利誘拐のついでに拉致した少年を、同じく監禁していた女に代理母をやらせて、後継者に育てようなんて……。その大人になった少年(でも、高校生くらい)に対し、拉致された息子が戻るのをひたすら待つ両親が住む家へ、強盗殺人をやらせるなんて……。
そして、父を自分が殺したことを知った少年は、入院している母を守りながら5人組と対決していくことに。カーチェイス、カーアクション、格闘シーン、2派を戦わせて共倒れを狙う、集団アクション・シーンなど、見どころは満載だ。それでも、少年役ヨ・ジングと、代理父の1人役キム・ユンソクの最終1対1の対決で、胸は高鳴る。
しかし、それらの凄まじさを緩和するエピソードも挿入されて、ホッとできるようにしているのは、最新のこの種の韓国映画の新味だろうか。少年のラブ・ストーリーの部分や、ラスト・シーンのエピソードには、ジーンとくるかもしれない。女性シンガーのソロによる、癒しのギター・スロー・ナンバーも余韻を深める。
(宮城 正樹)
公式サイト⇒http://www.hwayi-movie.net
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