『私の,息子』
原題 | 原題:Pozitia copilului 英題:CHILD’S POSE |
---|---|
制作年・国 | 2013年 ルーマニア |
上映時間 | 1時間52分 |
監督 | 監督・共同脚本:カリン・ペーター・ネッツァー |
出演 | ルキニツァ・ゲオルギウ,ボグダン・ドゥミトラケ,イリンカ・ゴヤ |
公開日、上映劇場 | 2014年6月21日(土)~Bnukamuraル・シネマ、7月~シネ・リーブル梅田、順次~京都シネマ、元町映画館 ほか全国順次公開 |
受賞歴 | 第63回ベルリン国際映画祭 金熊賞(最高賞)&国際映画批評家連盟賞W受賞、アカデミー賞外国語映画賞ルーマニア代表作品 |
~息子が,母の羊膜から解き放たれるとき~
母コルネリアの息子バルブに対する感情が綴られていく。冒頭で,彼の母と叔母が座って話すシーンを,まるでプライベートな映像のような感覚で映し出している。だが,ある家族の特殊な情景に限られない,もっと普遍的に存在する家族の世界へと広がっていく。それは,コルネリアが,自分の息子に対する愛情を再確認すると共に,自分の視野の狭さに気付く過程でもあった。母は,それまで知らなかった息子の姿を見て涙ぐむことになる。
息子は,母の誕生パーティに顔を出さず,電話をしただけだった。その理由が端的に示される。母は,息子のためだと思い,息子が買ってきて欲しいと頼んだ点鼻薬とは違うものを買ってくる。息子は母が絶対に変わらないと確信し,母は息子に嫌われていることをも受け入れる。いつまでも平行線をたどりそうな2人の関係が浮彫になる。一方で,バルブの問題はしたいことがあっても反対に振る舞うことだと,彼の恋人カルメンが指摘する。
その契機は,バルブが起こした交通事故だった。彼は,前車を追い越そうとしたとき,14歳の少年を跳ね飛ばして死亡させた。警察に赴いたコルネリアは,バルブの供述に口を挟む。警察では前車とバルブの車両の速度が問題となった。そこで,息子を救おうと,今度は前車の運転者に会いに行く。すると,弱みにつけ込んで大金を要求される。ルーマニア社会の実情がどうかは分からないが,少しずれた感覚の描写が母の強引さを際立たせる。
コルネリアは,カルメンとバルブを伴って車で被害者の両親宅へ行くが,カルメンと2人だけで訪問する。バルブは,自己の存在を消されてしまう。母は,たった一人の息子の人生を壊さないで欲しいと嘆願し,バルブの長所を語る。だが,それは母の息子に対する願望を吐露しているようにも聞こえる。コルネリアが車に戻ると,今度はバルブが車を降り被害者の父親と対面する。そのとき,山が動くように母と息子の関係に変化が生まれた。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.watashino-musuko.com/
(C)Parada Film in co-production with Hai-Hui Entertainment All rights reserved