『バチカンで逢いましょう』
原題 | Omamamia |
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制作年・国 | 2012年 ドイツ |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | トミー・ビガント |
出演 | マリアンネ・ゼーゲブレヒト、ジャンカルロ・ジャンニーニ、アネット・フィラー、ミリアム・シュタイン、ラズ・デガン |
公開日、上映劇場 | 2014年4月26日(土)~新宿武蔵野館、5月17日(土)~シネ・リーブル梅田、5月24日(土)~京都シネマ、5月下旬~元町映画館 他全国順次公開 |
~熟年版ローマの休日、べスパからはみだすお尻がキュート~
老後をどこで迎えるか――これはとても切実な問題。誰もがいつかは直面するはずの命題。
オマ(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)はカナダの大自然の山懐に抱かれて人生のほとんどを過ごしてきた。亡き夫との思い出も、子どもたちとのかけがえのない時間も、人生で大切なものはみんなここにつまっている。しかし、今、そのふるさとを後にしようとしている。それは、ローマ法王との謁見の夢を叶えるため。そして、ローマ法王から直々に赦しと祝福をいただくためだ。
ところがどっこい、一緒に暮らせると信じていた娘からは老人ホームのパンフレットを渡され、楽しみにしていたローマ旅行はフイになってしまった!一大決心したオマは単身ローマへ。頼みの綱は大学進学を目指し下宿中の孫娘・・・のはずが、なぜか部屋にはタトゥーの男が・・・。
この変てこりんな共同生活が楽しい。親子とはとかく衝突しがちなもの。でも、そこにワンクッション、ちょうどひと世代分ぐらいあくと、お互い肩の力がぬけていい感じにゆるくなる。お互いに危なっかしさもすべてが愛おしく感じるから不思議。しかし、そんなほのぼのとした暮らしも長くは続かない。生真面目な娘が老いた母と電話に出ない娘に業を煮やし乗り込んできたから、さぁ大変。女三代、抱えてきた秘密も一挙に露見し、てんやわんやの大騒動。そして、オマにロマンスの予感!?
石畳の舗道、スペイン階段、縦列駐車にべスパとローマの代名詞が次々登場し、そこをヘップバーンさながらに闊歩するのは太っちょのおばあちゃんだから、もうユーモラスで可愛くて仕方ない。サエなかった風貌がどんどん輝いてくるのがありありとわかる。若い娘なら、さもありなんというところだが、おばあちゃんでもかくや?とうなる。それは別に恋をしているからではない。人は自分の足で立つとこんなにも伸びやかになる。田舎から出てきた当初は、なんとなくうつむきがちで、自分がグズで厄介者のように感じている。しかし、おっかなびっくり自分で一歩踏み出し、考え、道を切り開いたとき、その顔は輝き始める。いくつになっても冒険できる、挑戦できる、とオマの輝く笑顔が証明しているのだ。旅とは単なる非日常への逃避行にあらず。新たな人と出会わせてくれるもの、そして新たな自分と出会うもの。久しぶりに旅に出てみたい!と思わせてくれる1本だ。
(山口 順子)
公式サイト⇒ http://www.cinematravellers.com/
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