『あなたを抱きしめる日まで』
原題 | Philomena |
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制作年・国 | 2013年 イギリス・アメリカ・フランス |
上映時間 | 1時間38分 |
原作 | マーティン・シックススミス『カトリック教会が私の子供を売った』 |
監督 | 監督:スティーヴン・フリアーズ 脚本:スティーヴ・クーガン、ジェフ・ポープ |
出演 | ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン、ソフィー・ケネディ・クラーク、アンナ・マックスウェル・マーティン、ルース・マッケイブ、バーバラ・ジェフォード |
公開日、上映劇場 | 2014年3月15日(土)~大阪ステーションシティシネマ/なんばパークスシネマ/MOVIX京都/神戸国際松竹/TOHOシネマズ西宮OS、他全国ロードショー |
~ひと目息子に会いたい!奪われた母子の絆をさがす旅~
生き別れた息子に会いたい!今日も息子の無事を教会で祈る母。50年前カトリック教会に息子を奪われた母の祈りに、神は何と応えるのだろうか―――長年秘密を抱え悔恨の日々を送ってきた母親が、過去と対峙しながら息子を捜す旅から判明した驚愕の真実とは?
ジャーナリスト役で出演しているスティーヴ・クーガンは、2010年に掲載されたガーデアン紙の『カトリック教会が私の子供を売った』という本の著者マーティン・シックススミス氏のインタビュー記事を読んで、本作の映画化を決めたそうだ。実在のフィロミナ・リーさんと元エリート記者の体験を基にした本作は、奪われた子供への愛を取り戻す旅でもあった。
アイルランドにおけるカソリック教会の冷徹さは、『マグダレンの祈り』(2002年)でも周知のこと。本作同様に気の毒な若い女性たちを収容する精神病院が舞台だったが、性的交渉を罪として罰を与える、まるで刑務所のようで、人の心を救うべき宗教が、逆に人を苦しめている、と強い怒りを覚えた。本作はそんな悲惨な事実をベースにしているが、フィロミナの寛大な気持ちに救われ、ユーモアと愛情に満ちあふれた感動作となって、私たちの心を潤してくれる。
特に、労働者階級のフィロミナと、中産階級の元エリート記者という少しギャップのある凸凹コンビが繰り広げる珍道中が、全体を軽くしているようだ。
【STORY】
イギリスに住むフィロミナ(ジュディ・デンチ)には長年家族にも秘密にしてきたことがあった。それは、50年前アイルランドの修道院で生んだ私生児アンソニーの存在だった。まだ10代だったフィロミナは、カーニバルで出会ったハンサムな青年と恋に落ち身籠ってしまい、家から追い出され修道院に引き取られて出産する。敬虔なカトリック信者の多いアイルランドでは未婚の母はふしだらで罪を犯した者とみなされ、罪を洗い流すために修道院の洗濯場で酷使させられていた。ある日、修道院が勝手に息子をアメリカ人夫婦に引き渡してしまう。
50年経って、どうしても息子にひと目会いたい。そんな母の願いを叶えようと娘のジェーンは元政府広報官で有名ジャーナリストのマーティン(スティーヴ・クーガン)に相談するが、マーティンは三面記事のような事には関わりたくないと断われる。それでも、出版社の後押しもあり、再起を賭けて引き受けることに。こうして、フィロミナとマーティンの二人三脚での、過去を検証しながら息子を捜す旅が始まる。
養子縁組の資料は火事で焼失したと固く口を閉ざす修道院側の冷たい対応に反し、初めて乗る飛行機、初めてのアメリカ、初めての高級ホテル、どれもエキサイティングなことばかりのフィロミナ。さらに、まるで謎解きするように少しずつ見えてくる真実。ハラハラしながらフィロミナの動向に惹きつけられる。ジュディ・デンチの可愛らしいおばあさんぶりが可笑しい。そして、いつしかマーティンが実の母親に向けるような優しい眼差しでフィロミナを見守る姿がいい。今年のアカデミー賞では、作品賞や主演女優賞、脚色賞、作曲賞にノミネートされ、フィロミナ・リーさん自身も招待されて、会場で脚光を浴びていた。きっとまた、ハリウッドの祭典にはしゃいでいたことだろう。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.mother-son.jp/
©2014『あなたを抱きしめる日まで』製作委員会