『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』
原題 | All is Lost |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間46分 |
監督 | J.C.チャンダー |
出演 | ロバート・レッドフォード |
公開日、上映劇場 | 2014年3月14日(金)~大阪ステーションシティシネマ/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮OS、他全国ロードショー |
~大海原にたった一人。生死と向き合う壮絶なサバイバルに打たれる~
海を眺めているのは大好きだが、水に対する恐怖感を克服できない身としては、こういう映画はホラーよりもオカルト映画よりも恐ろしい。仲間もいなくて、たった一人、緊急の連絡もとれずに大海を漂うなんて!そして、お決まりの嵐はやって来るわ、船は使いものにならなくなるわ、海中の生物に襲われるわ…どれだけの体力と精神力が求められることか。
そういう怖い映画の主人公を、文字通り身体を張ってみごとに演じ切ったのが、なんと76歳になる名優ロバート・レッドフォードである。出演は彼だけ、せりふもほとんどなし。だから、ドキュメンタリー的なタッチになっているのだが、これがまた比類なき緊迫感によって観る者を最後まで引っ張り回してくれるのだから驚く。
老境に入った主人公の男は、自家用ヨットでインド洋をのんびりと航海していた。これまでどんな人生を歩んできたかはわからないが、きっと現在は何不自由ない富裕層で、生活を心ゆくまで楽しんでいたはず。ところが、眠っている間に、海上を浮遊していたコンテナにヨットが激突、思わぬ浸水事故に見舞われる。それが、ことの始まり。浸水によって無線もパソコンもパーになり、救援の道は閉ざされ、自分がどこにいるかもわからない。やがて、浸水がひどくなったため、必需品を持って救命ボートに移らざるをえなくなるのだ。
常人ならパニックに陥る状況だが、航海の経験が豊富であろう男は冷静さを保ちつつ、知恵を絞ってあらゆる方策を試みる。海との闘いは、自分自身との闘い、孤独との闘いでもある。映画『ゼロ・グラビティ』の“宇宙にたった一人”という想像を絶する孤独感をも思い出す。だが、これら作品の主人公の後押しをするのは、何としても生き延びたいという強い意志、まさに“ネバー・ギブ・アップ”だ。むろん、彼だって途中で癇癪を起したりするのだが、とうとうこれまでかという場面まで、その意志は、ほころんでは繋ぎとめられる。
やがて、彼はある手紙を綴り始める。人は自らの死を覚悟した時、言葉を残したいという思いにかられるのかとしみじみ思う。そして、エンディングをどう見るか。その手を“神の手”と解釈すると、映画は異なる色合いを醸し出すという点も面白いところである。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://allislost.jp/
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