～自分より相手を想う心で世界に平和を！～

　ディズニーの長編アニメーションの伝統を継承しながら，その中に現代性を盛り込んだ逸品だ。いつまでも心に残る一編として輝き続けるに違いない。二幕からなるミュージカルのような構成で，珠玉のナンバーが力強くドラマを牽引していく。特に前半のクライマックスでエルサが歌う「Let it Go」が圧巻だ。秘密を知られたエルサが何も恐れることなく心を解き放って氷の城を築き上げる。伸びやかに広がる映像が高揚感を鮮やかに映し出す。

　王家に生まれたエルサは，生まれつき備わった魔法の力を制御できず，幼いとき妹アナを傷付けてしまう。自らの力に怯え，自分だけの世界に閉じ籠もる。その記憶を消されたアナは，姉に避けられていると思い込んでいた。デュエット曲「For the First Time in Forever」が２人の心情を浮彫にする。そして，エルサの戴冠式の日に運命が動き始めた。愛に渇望していたアナはハンス王子と出会ったその日に婚約してしまい，エルサは雪の女王に変身する。

　ハンスの求婚は一目惚れというには違和感がある。その不可解さは後のストーリー展開で見事に氷解する。それはお伽話の王子の既成概念を痛快に打ち破るものだった。一方，アナは，エルサと王国を氷の世界から救うため，冒険の旅に出て山男のクリストフと出会う。雪の怪物に襲われるなど手に汗握るアクションが展開するが，アナがエルサの力を心に受けてしまう。唯一アナを救えるという”真実の愛”を求めてサスペンスが盛り上がる。

　雪だるまのオラフは，姉妹の思い出を映した愛着の湧くキャラだ。暑さに弱いのに夏に憧れ，アナを救おうと暖炉に火を付ける。その邪気のない透明な心には真実の愛が見えていたようだ。雪嵐の中で，アナとクリストフは互いを探し求め，ハンスはエルサを追い詰める。一瞬の静寂が訪れて，アナは咄嗟の行動に出た。真実の愛が氷を溶かし，アナはもちろん，エルサと王国をも救う。恐れる心を克服して力を制御できたエルサを見届けよう。

（河田 充規）

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