『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
原題 | NEBRASKA |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | 監督:アレクサンダー・ペイン 脚本:ボブ・ネルソン 撮影:フェドン・パパマイケル |
出演 | ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキップ、ボブ・オデンカーク、ステイシー・キーチ |
公開日、上映劇場 | 2014年2月28日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国ロードショー |
~懐かしい風景、濃密な父子の時間、旅がもたらす幸福感~
本当の幸せはお金では買えない――なんてよく耳にするセリフだが、この映画の主人公ウディが手にしたものは100万ドル以上の価値がある! 見ているこちらも、幸福感で胸がいっぱいになった。
『アバウト・シュミット』や『サイドウェイ』『ファミリー・ツリー』など、人生も後半にさしかかった男たちの心の機微を、個性派俳優を活かした人生讃歌の作品で定評のあるアレクサンダー・ペイン監督。今回は今まで悪役が多かったブルース・ダーンを主人公に、それまでのアクの強いイメージを払拭する新境地を拓いたような演技を導いて、見事昨年のカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲らせた。ブルース・ダーンも、無骨で酒好き、少々認知症気味のウディを、脱力感たっぷりに演じて、とても滋味深い。
『北北西に進路を取れ』や『オズの魔法使い』等でも舞台となっていたアメリカ中部の穀倉地帯。ネブラスカ出身のペイン監督とあって、どこか懐かしい雰囲気だ。「100万ドルの賞金」が当たったと本気で思い込んでいる年老いた父親を乗せてネブラスカ目指して運転する息子。二人の背後に広がるモノクロの風景は、父親の人生を辿る旅をドラマチックに盛り上げている。辛辣なセリフが飛び交いながらも、しみじみとした人情味あふれる作品だ。
【STORY】
ウディ(ブルース・ダーン)は「100万ドルの賞金」が当たったと信じ込み、家族が止めるのも聞かず、モンタナ州からネブラスカ州まで歩いて受け取りに行こうと家出を繰り返す。その度に警察のお世話になり、妻のケイト(ジューン・スキップ)に怒鳴られ、息子たちにも迷惑をかけていた。次男のデイビッド(ウィル・フォーテ)は、飲んだくれの親父とは疎遠にしていたが、「老人ホームに入れる!」という母ケイトと兄ロス(ボブ・オデンカーク)の剣幕を見て父親が可愛そうになり、彼の気が済むならとネブラスカへ父親を連れて行くことにした。4州にまたがる父と息子の旅の始まりである。
せっかくなので、デイビッドは途中ラシュモア山へ寄り道するが、一刻も早く賞金を手にしたいウディはそれが気に入らない。ところが、給油で立ち寄った町でウディが転んで怪我をしてしまい、週末をウディの故郷にいる兄の家に泊めてもらうことに。そこで、日曜日に親戚が集まることとなり、ケイトとロスも駆け付けて久しぶりの再会を祝う。一家はお墓参りをしたり、バーで旧友たちと再会したりして、次第にウディとケイトの若い頃のことが明らかになっていく。そこでウディが「100万ドルの賞金」のことを喋ってしまったせいで町中大騒ぎとなり、欲深い輩が本性を見せ始める。
町から出たことがないのでは?と思えるような田舎の人々。皆が顔見知りで、昔のことがポンポン出てくる。特に、口の悪い母親の言動が傑作だ! 父親が酒に溺れるようになった理由や、母親との馴れ初めや、父親の初恋の人のことや失敗した事業のことなど、デイビッドにとって初耳のことばかり。
ゆっくりと流れる父と息子の濃密な時間がいい。朝鮮戦争へ出征した頃の父親の写真を見た時のデイビッドの表情がいい。100万ドルをどう使うのか父親に尋ねるシーンがいい。「100万ドルの賞金」などインチキだと知りながら、父親の夢に寄り添うデイビッドの優しさがいい。ウディの人生は決して幸せとは言えなかったかも知れないが、こんな優しい息子に恵まれて、この上なく果報者だ。ああ、また見たくなってきた!
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://nebraska-movie.jp/
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