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『ラヴレース』

 
       

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作品データ
原題 LOVELACE
制作年・国 2012年 アメリカ
上映時間 1時間33分  R18+
監督 ロバート・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン
出演 アマンダ・セイフライド、ピーター・サースガード、シャロン・ストーン、ジェームズ・フランコ、クロエ・セヴィニー、クリス・ノース
公開日、上映劇場 2014年3月1日(土)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開

 

~伝説のポルノ女優が警告するものとは?~
 

いきなりですが、『ディープ・スロート』というポルノ映画をご存じですか?1972年に公開され世界的に大ヒットし、一説には『タイタニック』の興行収入6億ドルに近い額を稼いだという。当時日本で見た人によると「ぼかしばかりでよく分からなかった」そうだが、アメリカで見た人によると「“ポルノ3D版”のような迫力だった」そうで、その後のポルノ界を大きく飛躍させたという。最近では普通の映画もポルノ映画との区別がつかない位過激になってきているので想像しにくいが、当時は表現の自由をめぐってポルノが反体制の旗印となっていたというから、時代の変遷を感じさせる。

本作は、『ディープ・スロート』の大ヒットでハリウッドセレブの仲間入りを果たしたと思われていた主演女優のリンダ・ラヴレースが、公開から6年後に発表した衝撃の告白本を基に作られている。主演は『マンマ・ミーア』や『レ・ミゼラブル』などのミュージカルからサスペンスやラブストーリーと、溌剌とした表情が美しい若手実力派のアマンダ・セイフライドがポルノ女優というハードな役に挑んでいる。悲惨な経験をしても決して心まで堕ちることのなかったリンダ・ラヴレースを、持前のひたむきさで演じ切り、感動的な逸品となった。


 【STORY】
 Lovelace-2.jpgフロリダの小さな町で厳格なカトリック教徒の両親(シャロン・ストーン&ロバート・パトリック)と暮らしていた21歳のリンダ・ボアマン(アマンダ・セイフライド)は、地元でバーを経営するチャック・トレイナー(ピーター・サースガード)という年上の男性と知り合い、優しい愛情に飢えていたリンダはすぐに結婚してしまう。若いリンダにセックスの手ほどきをするチャックは、次第に過激になり、暴力をふるうようになる。バーが経営不振となり、金策のためリンダをポルノ映画に出演させることを思いつく。しかも、自分が教えたある「特技」を活かした売り込みは成功し、リンダを主演にしたポルノ映画が作られることになる。

リンダは、たちまち現場のスタッフや役者たちを魅了し、女優として大切に扱われる。映画の大ヒットを受け、「プレイボーイ」社のヒュー・ヘフナー(ジェームズ・フランコ)やハリウッドセレブから持てはやされるようになると、それを妬ましく思ったチャックは増々リンダに暴力的になっていった。リンダの人気に群がる男たちに彼女を売ったり、リンダそっくりのダッチワイフを発売したりと、リンダの屈辱的な日々は続いた。母親に助けを求めても、敬虔なカトリック教徒の母親は「夫に従いなさい」と言うだけ。逃げるに逃げられない窮地に追いやられるリンダ。


ただ「愛されたい」と願ったひとりの女性が陥った悲惨な世界は、どこでもあり得ること。特に芸能界では「有名になりたい」という女の子を喰いものにする亡者は多い。そんな悲惨な目に遭っている女性を救うために告白本を発表したリンダ。だが、その内容があまりにも衝撃的だったため、発行前に出版社からウソ発見器にかけられ内容の信憑性を問われる程だったという。

この映画は、単に伝説のポルノ女優の知られざる素顔を物語るだけでなく、あまりにも女性の人権をないがしろにした理不尽な世界を詳らかにしている。ひとりの女性が生きた70年代初頭の社会やセンセーショナルなポルノ映画の製作を通して、リンダ・ラヴレースの勇気がもたらしたものは、現代人の心に突き刺さる力を持っていると思う。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://lovelace-movie.net/
(c)2012 LOVELACE PRODUCTIONS,INC.

 

 

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