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『グロリアの青春』

 
       

gloria-550.jpg『グロリアの青春』

       
作品データ
原題 Gloria 
制作年・国 2013年 スペイン・チリ 
上映時間 1時間49分 R15+
監督 セバスティアン・レリオ
出演 パウリーナ・ガルシア、セルヒオ・エルナンデス、マルシアル・タグレ、ディエゴ・フォンテシージャ
公開日、上映劇場 2014年3月1日(土)~ヒューマントラストシネマ(渋谷、有楽町)、3月8日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ ほか全国順次公開

 


~男は過去を引きずり、女は未来に生きる~


 

 下腹ポッコリでも、あっちこっち垂れてても、しわやシミが目立ってきても、いいじゃない!「ブスも美人も50過ぎれば皆一緒!」と〈綾小路きみまろ〉に励まされ、自虐ギャグのひとつも飛ばしながら開き直って生きるしかないでしょ!? と、物欲も性欲も無くなり、失うものもない、恐いもの知らずの世代。だから「大阪のおばちゃんはコワい!」って言われるのかも?

gloria-3.jpg 本作はチリの映画ということで一筋縄ではいかないだろうとは思っていたが、見た直後はちょっと引いてしまった。主人公のグロリアは筆者と同年齢。どのように自分の人生に折り合いをつけるのか、興味津々で拝見。オールヌードといい、ベッドシーンといい、あまり見たくないものを見てしまった感が……せめて相手の男性がもっと若ければそうでもなかったかもしれないが、ジジイ過ぎてキモい!

 昨年のベルリン国際映画祭で銀熊賞主演女優賞を受賞したパウリーナ・ガルシアの、自由な生き方を尊重する自立したキャラクターは、時の流れを速く感じるようになった者に勇気を与えてくれる。誰も一緒に時間を過ごしてくれない孤独やわびしさ、さらに生きる虚しさなど、中年女性の心情が痛い程伝わってきて、共感しまくりの映画である。


【STORY】
 gloria-2.jpg 58歳のグロリア(パウリーナ・ガルシア)は、13年前によそにオンナ作って出て行った夫と離婚し、二人の子供を育てあげ、更年期も終わり、経済的にも自立した女性。毎日車の中でひと昔前のヒット曲を大声で歌いながらの通勤。仕事は順調だが、独立した子供たちとは、彼女の方から電話しない限り声も聴けない。夜な夜な中高年ばかりが集まるダンスホールへ通い、素敵なパートナーと出会うのを楽しみにしていた。

 ある日、ダンスホールで知り合った年上のロドルフォ(セルヒオ・エルナンデス)からデートの誘いを受ける。退役軍人で実業家のロドルフォは1年前に離婚。知的でユーモアのある会話を楽しめ、セックスも健在。グロリアにとっては理想的な男性。お互い本気で恋に落ちるが、デートの最中でも元妻や二人の娘たちから何度も電話が掛かってくる。ロドルフォは30歳になろうかという二人の娘と元妻の面倒をいまだにみていたのだ。とうとう堪りかねたグロリアはある行動に出る。


 グロリアの息子の誕生日のシーンが本作を象徴しているようで面白い。13年ぶりに再会した元夫とその妻、そしてグロリアとロドルフォ。一人で赤ん坊を育てているシングルファーザーの息子はミュージシャン。ヨガのインストラクターをしている娘は近々婚約者の住むスウェーデンへ行ってしまう。アルバムを見ながら子供たちの成長を振り返るグロリアと元夫。一番可愛い時期に傍に居られなかったと今さら嘆く元夫は、娘にすり寄ろうとするが拒絶されて、増々嘆き悲しむ。そんな時ロドルフォの携帯にまたもや娘から電話が――皆で楽しく過ごしていたのに、黙って家族の元へ帰ってしまったロドルフォ。過去を引きずる男たちの姿が哀れだ。

 それぞれの生活が忙しい子供たちの様子や、上の階のネコが侵入してくるグロリアのアパートでの様子、さらに友人たちとの会話や、彼女の背後で繰り広げられる若者たちのデモの様子など、すべてグロリアのそれまでの人生を反映しているものばかり。彼女が若い頃のチリは軍事政権下で、戒厳令がしかれていた。恐怖政治の下、グロリアも自由を求めるデモに参加していたかもしれない。ロドルフォはデモ隊を制圧する軍人だったかもしれない。

 本作を見て、時間が経って気付くことは、自分の人生を物語るときに必要なアイテムとは何だろうと考えたことだ。それほどこの映画は、中年女性の日常をさりげなく描いているようで、グロリアという一人の女性の人生を物語る要素を的確に配置して、実に奥深い。ラストシーン、ウンベルト・トッツィの歌「グロリア」にのって踊るグロリアは、明らかに人生のステージをワンランクUPしたように見えた。ひとつの恋が終わっても、それで人生が終わる訳ではない。懲りずに未来へと進化していくのだ。あっぱれグロリア!

(河田 真喜子

公式サイト⇒ http://gloria-movie.com/

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