『東京難民』
制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 2時間10分 R15+ |
原作 | 福澤徹三(『東京難民』光文社文庫刊) |
監督 | 佐々部清(『半落ち』『ツレがうつになりまして』) |
出演 | 中村 蒼、大塚千弘、青柳 翔、山本美月、中尾明慶、金井勇太、落合モトキ、田村三郎、岡村洋一、大谷ノブ彦(ダイノジ)、吹越 満、福士誠治、津田寛治、小市慢太郎、金子ノブアキ、井上 順 |
公開日、上映劇場 | 2014年2月22日(土)~TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮OS、他にてロードショー! |
~生きてさえいれば、人生何度でもやり直せる!~
人生、転落する時はあっという間。訳もわからず、あれよあれよという間に落ちていく。絶望と苦しみで心が折れてしまうこともあるだろう。だが、落ちるとこまで堕ちると、あとは這い上がるだけ。生きてさえいれば、チャンスはめぐってくる。今の苦労は、きっと未来の自分を助けてくれるはずだ。「あの時、あきらめなくて良かった!」と思える日は必ずやって来る!――と、主人公に声援を送りたくなる映画だ。
行くあてもなく、ネットカフェや24時間営業のファーストフード店やコンビニなどで一夜を明かす若者のことは、マスコミでも度々採りあげられてきた。本作では、そうした「ネットカフェ難民」や「マック難民」「コンビニ難民」と呼ばれる人々の実態をモチーフに、ひとりの大学生が親の経済的破綻によってホームレスになるまでを、今の日本が抱える問題を網羅しながら感動的に物語っている。
監督は、『半落ち』や『ツレがうつになりまして』など社会派の佐々部清。本作でも、格差社会のひずみに若者が翻弄される様子を活写して、誰にでも起こり得る問題として喚起。さらに、誰でも再チャレンジできる寛容な社会を目指し、重くなりがちなテーマの映画を、希望を抱かせる後味のいい作品に仕上げて、さすがだ。
【STORY】
能天気に学生生活を送っていた時枝修(中村蒼)は、父親が借金を抱えて蒸発してしまったせいで大学を除籍処分となり、アパートからも追い出されてしまう。ネットカフェで寝泊まりしながらティッシュ配りをして日銭を稼ごうとするが、中々上手く行かない。コツを教えてくれる先輩は、ネットカフェにも泊れず神社の軒下を借りる日々だという。次に危険な治験のバイトをしてまとまったお金を手にするが、可愛い瑠衣(山本美月)に騙されて入ったホストクラブで法外な代金を請求され、仕方なくそこで働かされることになる。
一見華やかなホストの仕事もノルマがきつくてハード。唯一、瑠衣に連れられて来店した客・茜(大塚千弘)との優しい関係だけが救いとなっていた。ところが、先輩の順矢(青柳翔)が作った借金200万円を茜に用立ててもらいホッとしたのも束の間、小次郎(中尾明慶)に持ち逃げされてしまう。追い詰められた順矢と修はヤクザな支配人(金子ノブアキ)から逃げて飯場暮らしを始めるが……。
修を演じた中村蒼がいい! 最初は無防備でバカな若者だった修が、順矢や瑠衣や茜のために身を呈して助けようとしたり、少しでも借金を返そうと誠意を見せたりする。「貧すれば鈍(どん)す」の諺とは反対に、堕ちる程に心は磨かれていくようにさえ思えた。失敗を繰り返しながらも徐々に人間として成長していく修を体現した中村蒼のひたむきさは、より多くの共感を得られるに違いない。そして、修の愚かさを笑えない、決して他人事ではない、と転落のメカニズムについて改めて考えさせられることだろう。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://tokyo-nanmin.com/
©2014『東京難民』製作委員会