原題 | Lee Daniels' The Butler |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 2時間12分 |
監督 | リー・ダニエルズ |
出演 | フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、ロビン・ウィリアムズ、ジョン・キューザック、ジェーン・フォンダ、アラン・リックマン、テレンス・ハワード、キューバ・グッディング・Jr、デヴィッド・オイェロウォ他 |
公開日、上映劇場 | 2014年2月15日(土)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー |
~政府側と黒人庶民側から描き出すアメリカ近代史の輪郭~
1950年代から80年代の30年もの間に、8期の大統領のもとで執事を務めた黒人男性の話と聞き、ホワイトハウスの知られざる内情を存分に垣間見ることができるのかと思っていた。しかし実際には、ホワイトハウスの出来事だけでなく、黒人の人権を大いに脅かし、当時ホワイトハウスでも事態の収拾に頭を痛めたような実在の事件が時系列で登場し、我々があまり目にすることのなかった黒人側からみたアメリカ近代史を浮かび上がらせる。監督を務めるのは『プレシャス』のリー・ダニエルズ。歴史が動く瞬間を目の当たりにしてきた執事と、歴史に翻弄されてきた彼の家族たちの非常にパーソナルな部分も丁寧に描きこみ、それぞれの立場で闘う親子の物語としても見応え十分だ。
余計なことをしゃべらず、空気のような存在でいなければいけないという執事の仕事をこなすセシル(フォレスト・ウィテカー)は、決して白人に迎合しているのではなく、大統領に仕えることが世の中を良くすることに貢献しているという自負があった。歴代の大統領を演じるロビン・ウィリアムズ、ジョン・キューザックらのなりきりぶりは見ものだが、中でも元レーガン大統領演じるアラン・リックマンの変装ぶりは見事。大統領にとっても、セシルの存在は黒人が感じていることを肌感覚で知ることのできる貴重な存在なのだ。
一方、長男ルイス(デヴィッド・オイェロウォ)は大学で公民権運動に関心を抱くようになり、60年にシット・イン運動(黒人が座れない白人席に座り込み、白人同様のサービスを受けることを求める運動)に参加。黒人解放闘争を展開した政治組織、ブラック・パンサー党員として権力側と闘い続けていた。父親の仕事に納得できないルイスとセシルの溝は深まるが、息子に対し妻グロリアは父親はホワイトハウスで闘っているのだと告げる。アメリカでは長寿トーク番組の司会者として絶大な人気を誇る、グロリアを演じるオプラ・ウィンフリーの存在感が親子関係に苦悩するセシル一家をがっちりと包み、家族の在り方を生々しく映し出す。
最後にとても印象に残った箇所を紹介したい。次男がベトナム戦争へ従軍中のとき、ニクソン大統領に話しかけた言葉、そして助言を求められたレーガン大統領に話しかけた言葉として「他に御用はございませんか?」という台詞が2度登場する。ニクソン大統領には戦争続行に対する考えを改めてほしいと言わんばかりの懇願するような声で、そしてレーガン大統領には職を辞し息子と共に闘う強い意志を秘めた声でセシル演じるフォレスト・ウィテカーはその台詞を口にするのだ。不要な言葉を話せない執事の意地と権力を目の前に闘う炎が、そこに凝縮されていた。(江口由美)
公式サイト⇒http://butler-tears.asmik-ace.co.jp/
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