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『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

 
       

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作品データ
原題 THE WOLF OF WALL STREET
制作年・国 2013年 アメリカ +R18
上映時間 2時間59分
原作 ジョーダン・ベルフォート著『ウォ-ル街狂乱日記 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』早川書房
監督 マーティン・スコセッシ 
出演 レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー、マーゴット・ロビー、ジャン・デュジャルダン、ロブ・ライナー他
公開日、上映劇場 2014年1月31日(金)~丸の内ピカデリー、新宿バルト9、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都他全国拡大ロードショー
受賞歴 第71回ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞(ミュージカル・コメディー部門)

 

~狂乱三昧から透けて見える、金儲け主義へのアンチテーゼ~

 とにかくお金を儲けて、ラリって、ヤリまくる。3時間ぶっ通しで、豪華絢爛、モーレツなテンションなのだから、観終ったら本当にお腹いっぱいの気分だ。1987年のブラック・マンデーによる失業から26歳で証券会社を設立、戦場のようなウォールストリートで成功を掴み、狂乱の限りを尽くした実在の男の物語は、現代アメリカの暗部を痛快に皮肉っているように見える。本作で5度目のタッグとなるマーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの情熱がそのまま昇華したかのような、栄光と挫折の狂乱エンターテイメント。今までのスコセッシ監督作品の中で一番“ヤバイ”かもしれない。

 

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  コネなし、金なし、学歴なし、でも「金儲けをしたい」という明確で強い目標があったジョーダン・ベルフォード(レオナルド・ディカプリオ)が成功するまでに時間はかからなかった。特にマシュー・マコノヒー演じる最初の上司が、いかに顧客から金を出させるかを新人のジョーダンに徹底的に叩き込むシーンは非常に印象深い。なぜなら、ウォール街で金儲けするためのマネーゲーム哲学が、後々一人のモンスターを生み出すことになるのだから。

 

WOW-2.jpg 金儲けができると聞いて部下に名乗りをあげたドニー(ジョナ・ヒル)と証券会社を立ち上げたジョーダンは、金持ちだけを相手にするターゲット戦略と社員のセールストークを徹底的に教育し、あっという間に何百人もの従業員を抱える新興証券会社の社長としてウォール街でも注目の存在となる。役員会議もドラッグなしでは始まらず、会社のイベントではコールガールを大量に呼び込んで、無礼講の大騒ぎ。しかし、その勢いで社員にも熱く自身のセールス哲学をぶちかますジョーダンの演説は、人心を動かす力強さがあり、本作のみどころだ。カリスマロックスターのような熱狂をもって、役員仲間たちをはじめ、社員皆がジョーダンを慕い、愛していた。FBIに目を付けられながらもしぶとく逃れ続けることができたのは、お金だけではなく、仲間も愛するジョーダンの人間性を物語っている。

 

WOW-3.jpg 一方、徹底的に私生活の派手さを描き込み「お金があれば何でもできる」を体現したようなギンギラギンの演出は、圧巻の一言。特に伝説のドラッグ服用によるジョーダンのラリッっている様の生々しさは脳裏に残るぐらいだ。しかし、狂乱には必ず終わりがくる。最悪の事態に追い込まれたジョーダンが社長退任のあいさつで述べた「チャンスの国、ここはアメリカだ。エリス島だ」という言葉に私が強い違和感を覚えたのは、チャンスがもはや単なる「お金儲けに成功する」という意味にしか聞こえなかったからだろう。そして、観終わってお腹いっぱいになった後に残る虚しさこそ、スコセッシ監督の意図するところではないかと思うのだ。
(江口由美)

 公式サイト⇒http://www.wolfofwallstreet.jp/
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