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『小さいおうち』

 
       

chiisaiouchi-550.jpg 『小さいおうち』

 

       
作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 2時間16分
原作 中島京子『小さいおうち』文書文庫
監督 山田洋次
出演 松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、吉行和子、橋爪功他
公開日、上映劇場 2014年1月25日(土)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー

 


~意外と明るい戦前の暮らしと“家族の秘密”~


chiisaiouchi-4.jpg 長年日本の「家族の絆」を描いてきた山田洋次監督が、今回は「家族の秘密」について描いている。ラブシーンを直接描写しなくても大人の色気を感じさせる映画を撮りたいと撮影前にコメントしていた山田監督が、劇中にいくつもの恋愛の証しを秘めて、観る者を惹きつける。濃密な舞台劇を観たような満足感がある作品だ。昭和初期、東京郊外にあった赤い屋根の小さなおうちに女中として働いていた女性の目を通して、時代の変化や人の心の移ろう様子を捉えて秀逸だ。中国大陸ではきな臭い事件が勃発していた昭和10年位から太平洋戦争終了後までを、平成のタキ(賠償千恵子)が回想するかたちで物語は綴られていく。


【STORY】

chiisaiouchi-5.jpg 平成の世、年老いたタキの身の回りの世話をしてくれる兄弟の孫たち(妻夫木聡と夏川結衣)にうながされて自分史を書き始めたタキ。

 昭和10年、雪深い山形の農村から上京したタキ(黒木華)は、最初作家(橋爪功)の家で女中として働き、そこで主人の秘密を知っても口外しないのが家庭円満を保持する女中の務めだと教えられる。それから、作家の娘・時子(松たか子)の嫁ぎ先で働くことになる。大正ロマンの洋風の家は赤い屋根の小さな可愛いらしいおうちだった。会社員の平井雅樹(片岡孝太郎)と息子の恭一と美しい若奥様・時子の3人家族。タキは、家族の一員のように溶け込んで、幸せな日々を過ごしていた。

 ところが、新年会に雅樹の会社の後輩・板倉(吉岡秀隆)がやって来てから何かと波風がたつようになる。雅樹は独身の板倉にお見合いを世話するよう時子に命じるが、板倉は時子に一目惚れしてしまい、見合い話を断り続ける。そんな板倉の想いを受け止める時子。二人の逢瀬が始まり、気をもむタキ。タキもまた女性として理想的な時子に特別な想いを寄せていた。戦争が始まり、板倉にも召集令状が届く。最後にどうしても板倉に逢いたい時子は恋文をしたため、それをタキに託すが・・・。


chiisaiouchi-3.jpg 当代、和服の似合う№1女優の松たか子が、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』のラストシーンで見せた気品ある妖艶さで、男性だけでなく女性をも魅了する。まるで成瀬巳喜男監督作の中の大女優たちのようだ。女中のタキを、『舟を編む』『シャニダールの花』など2013年だけでも4本の出演映画が公開された黒木華(はる)が、新鮮な眼差しで物語をけん引している。そして、平成の世のタキを演じたのは、山田洋次監督作には欠かせないベテラン女優:倍賞千恵子が、誠実な強い想いを貫いたタキの生涯を彩っている。

 松たか子演じる昭和初期の若奥様が織りなす物語は、意外な程明るく戦前の暗さを全く感じさせない。赤い屋根の小さいおうちで命を輝かせていた人々の幸せを一瞬で消し去った戦争の非情さを改めて思い知ることになる。それにしても、美しい人妻が男の下宿先の階段を上がるシーンはサスペンスフルでドキドキしてしまう。まさに、山田監督が目指した大人の恋模様を想像させる見事な演出だ。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.chiisai-ouchi.jp/opening.html
(C) 2014「小さいおうち」製作委員会