『エヴァの告白』
原題 | THE IMMIGRANT |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ・フランス |
上映時間 | 1時間58分 |
監督 | ジェームズ・グレイ |
出演 | マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナー、ダグマラ・ドミンチック、ジッキー・シュニー、エレーナ・ソロヴェイ、アンジェラ・サラフィアン他 |
公開日、上映劇場 | 2014年2月14日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS 他全国順次公開 |
~利用されたアメリカン・ドリーム、その行く末は?~
“自由の国アメリカ”に真の自由も平等もありはしないと僕はつくづく思う。だが、毎年地球のあらゆる場所から何人もの人間が夢を追いかけてニューヨークにやって来る。そんな夢などここには存在しないし、在った例しがないというのに。
…という一節を、ずいぶん前に小説の中に書いた。アメリカン・ドリームという名の甘い響きと実情との間のギャップに触れたのだが、原題が『移民』を表すこの映画を観て、再び想う。夢を実現した人はごくひと握り、だけど、苦難を強いられながらも大国アメリカを底辺で支えてきたのは、そういう移民の人々ではなかったか、と。
1921年の冬、祖国ポーランドからニューヨークのエリス島に降り立ったエヴァと妹のマグダ。両親を失った彼女たちだが、目の前に広がる新しい人生に心が騒ぐ。しかし、入国審査で、肺病だと診断されたマグダは病院に隔離されることになり、エヴァはさまざまな条件により入国拒否され、強制送還の瀬戸際に。そんな彼女の前に、ブルーノと言う名の男が現れ、救いの手を差し伸べるのだが…。
美しいな、マリオン・コティヤール!悲劇のヒロインとは、昔から美人で薄幸で、と相場が決まっていて、そういう意味では実にはまり役だ。グレイ監督が、マリオンのために脚本を書き、メガホンを取ったと聞けば、ますますその印象は強くなる。そして、エヴァをめぐる二人の男。ホアキン・フェニックスとジェレミー・レナーは、まるで陰と陽の堕天使のような、興味深い人物像を描きだしている。全く違うタイプに見えて相似形、自分自身の一部を相手の中に認めてしまうから、お互いに相手が気に入らず、それがトラブルの種となってエヴァを巻き込んでいく。
それでも、この映画は最後に希望の光を見せてくれる。考えもしなかった娼婦という仕事に就き、だまされっぱなしだったエヴァが、妹を救出するためのたくましさを身につけるようになるのだ。セピア色に彩られた映像がノスタルジックな雰囲気を醸し出し、アメリカの歴史の裏側にあっただろう一つのドラマと向き合わせてくれる。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://ewa.gaga.ne.jp/
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