『ダラス・バイヤーズクラブ』
原題 | Dallas Buyers Club |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間57分 R15+ |
監督 | 監督:ジャン=マルク・ヴァレ( 『ヴィクトリア女王 世紀の愛』)、脚本:メリッサ・ウォーラック 『白雪姫と鏡の女王』 |
出演 | マシュー・マコノヒー( 『ペーパーボーイ 真夏の引力』(13)『マジック・マイク』(13) 『リンカーン弁護士』(11)),ジェニファー・ガーナー(『バレンタインデー』(10)、『JUNO/ジュノ』(08)、『エレクトラ』(05)),ジャレッド・レト(『ミスター・ノーバディ』(11)、『チャプター27』(07)『レクイエム・フォー・ドリーム』(01)) |
公開日、上映劇場 | 2014年2月22日(土)~新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
受賞歴 | 第71回ゴールデングローブ賞 映画の部ドラマ部門で主演男優賞(マシュー・マコノヒー)/映画の部助演男優賞(ジャレッド・レト)をW受賞 |
~逆境の中でも生きたいとの願いを貫いて~
1985年,ロック・ハドソンがエイズで入院した。そのとき,テキサス州ダラスでは”カウボーイ”の電気技師ロン・ウッドワーフが酒と女とロデオに興じていた。彼は,ある日突然,HIV陽性で余命30日と医師に宣告される。ゲイの病気に罹るはずはないと否定するが,身体には異変が生じており,仲間たちからはゲイ野郎と罵られる。医師イブに未承認薬AZTの処方を断られたため,病院の職員から不正に入手するが,それにも限界があった。
ロンは,宣告から28日目にレイヨンと出会う。彼は,女性として承認されず,社会から疎外されていた。2人が病室で初めて出会うシーンが印象に残る。ロンは,余命幾ばくもない状況で初めて疎外感を味わっていた。だから,逆境の中でも心の折れないレイヨンに生きる強さを感じたのだろう。逆に,レイヨンは,ロンから自分を大切に生きる輝きを受け取る。ロンのため男の格好で父親に会いに行き援助を求める,その彼女の姿が痛々しい。
ロンは,国外で入手した薬を米国に持ち込み,自ら使用するだけでなく,会員権を販売して会員に薬を無料で配るようになった。このシステムがダラス・バイヤーズクラブだ。一方,AZTには副作用の問題があったが,製薬会社がその販売を始める。しかも,薬の販売に医師の処方箋を必要とする新しい基準が設けられた。その中で,ロンは,声高に自らの正当性を強調して社会の不条理を糾弾するのではなく,ただ必死で生きようとしていた。
ロンは,宣告から2557日目の1992年9月12日に力尽きた。その後,薬の多様化で多くが救われたという。彼には同じ境遇の人々を救うという明確な目的があったわけではない。放縦に見えても実は人生を大切にしていたロンの姿勢が,イブを始めとして社会に受け入れられたといえる。スクリーンは,生きたいという願いに貫かれた一人の男を大きく映し出した。ロンの生き様が川の流れのように移りゆき,振り返った先に生命の輝きが見える。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.finefilms.co.jp/dallas/
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