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『スノーピアサー』

 
       

snowpiercer-550.jpg『スノーピアサー』

       
作品データ
原題 SNOWPIERCER 
制作年・国 2013年 韓国、アメリカ、フランス 
上映時間 2時間05分
原作 原作:「LE TRANSPERCENEIGE」ジャン=マルク・ロシェット、ベンジャミン・ルグランド、ジャック・ロブ
監督 監督:ポン・ジュノ  脚本:ポン・ジュノ、ケリー・マスターソン 撮影:ホン・ギンピョ 音楽:マルコ・ベルトラミ
出演 クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、オクタヴィア、スペンサー、ジェイミー・ベル、ユエン・ブレムナー、コ・アソン、ジョン・ハート、エド・ハリス 
公開日、上映劇場 2014年2月7日(金)~TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS) 他 全国ロードショー

 

 


~独裁者に反抗する“革命軍”リーダー~


 

  また一歩、韓国映画が先に進んだ。ポン・ジュノ監督の韓米仏合作映画『スノーピアサー』はそう痛感させる破天荒な近未来SF。生き残った全人類が乗るノンストップの弾丸列車…この秀逸なアイデアにワクワクする。

snowpiercer-2.jpg 型破り映画で驚かせる韓国ポン・ジュノ監督の新作はフランス・コミックの映画化。様々なSFのエッセンス抽出し、ポン・ジュノ流に仕立て上げた。昨年、米映画『ゼロ・グラビティ』が宇宙SFの新機軸を見せたのと同様、昨今大流行りの世界滅亡SFを大胆に切り開いたことに驚きだ。 ズバリ、近未来の“ノアの方舟”物語。旧約聖書を映画化した大スペクタクル『天地創造』(66年ジョン・ヒューストン監督)は巨大な方舟が再現されて話題を集めたが、ポン・ジュノ監督の“方舟”は「地球を1年かけて一周する列車」その名も“スノーピアサー(雪を突き抜ける列車)”。 2014年、地球温暖化を防ぐため、人類は79カ国合同で人工冷却物質を散布、その結果、地球は新たな氷河期に突入する。雪と氷に覆われた地球では、生き残った人類が列車に乗り込んで目的地もないまま延々と走り続ける…。

 列車は永久不滅のエンジンを搭載しているが、客車は富裕層と貧困層に分けられ、最後尾の車両には飢えた人々があふれ、富裕層は前方の車両で優雅な生活を送っている。何のことはない、未来でも社会の格差構造に変化はなかった。列車が走り始めて17年、列車の主、ウィルフォード産業の支配を覆すべく、一人の男カーティス(クリス・エヴァンス)が立ち上がる。

snowpiercer-3.jpg  彼には貧困層の精神的リーダーで情報通の“賢者”ギリアム(ジョン・ハート)が協力、奪われた一人息子を取り返そうとする母親アンドリュー(オクタヴィア・スペンサー)や、カーティスを慕うエドガー(ジェイミー・ベル)ら仲間たちに、セキュリティ担当のナムグン(ソン・ガンホ)を監獄から脱獄させ、その娘ヨナ(コ・アソン)も加わって“革命軍”がそろい、先頭車両に向けて前進を開始する…。

 ひたすら突っ走る弾丸列車は未来が見えないまま、どこへ行くのか?  緊迫感とスピード感あふれる列車サスペンスには古今、名作が多い。古典と言えるのが64年、ジョン・フランケンハイマー監督『大列車作戦』。第2次大戦末期、敗色濃厚のナチス・ドイツがパリの美術館から美術品を列車に乗せて略奪しようとするサスペンス。操作係長のバート・ランカスターが策略を巡らせて阻止するために単身戦う。轟音を響かせて疾走する機関車の迫力に手に汗握った。

  続いて76年、ジョルジュ・パン・コスマトス監督『カサンドラ・クロス』。こちらは、伝染性細菌に感染した男が、知らずにストックホルム行きの満員列車に乗り込むパニック映画。翌77年の正月映画としてリメイク『キング・コング』(ヒロインはジェシカ・ラング)と人気を二分した。こちらも、疾走する列車から脱出出来るかどうか、息を飲ませた。

  日本では東映の傑作列車サスペンス『新幹線大爆破』が世界に誇れる出来。事実、日本以上にフランスで大ヒットしたし、「時速80キロ以下に速度が落ちると爆発する」爆弾のアイデアは、キアヌ・リーヴスの出世作『スピード』にも使われた。

snowpiercer-4.jpg  『スノーピアサー』は列車サスペンスの未来進化形と言える。ハラハラドキドキの要素に、どこにも行けない閉塞状況が加わった内容はまさしく現代社会の象徴。がんじがらめの体制にあえぎ、遠く先頭車両に君臨する独裁者に反抗するリーダーは先ごろ血の粛清を行った「北」そのものではないか。

  もちろん、簡単には行けるものではない。NO2のメイソン総理(ティルダ・スウィントン)や銃を構えた兵士たちの制止を振り切って「透視が出来る」ヨナを先頭に、次々と扉を通過する。ある扉を開けると、そこには斧で武装した兵士たちが並んでいた…。

  普通の住宅やマンション同様、車両ごとにいろんな生活があるのが面白い。小学校の教室、監獄、花が一杯の温室、機械室、プールまである。そんな社会の縮図の列車の中、カーティスたちは様々な困難を乗り越えて無事、先頭車両にたどりつけるのか…。

  「最後の人類を乗せた“ノアの方舟”でさえ、人は平等ではなく、車両に分割されている。極限状態での人間の本性を探りたい」とポン・ジュノ監督はいう。絶望的な中で、なおもがきうごめく男と女…思えば、ジュノ監督は常に極限状態にあって人はどのように行動するか、を描いてきた。未解決の連続殺人を描いた緊迫サスペンス『殺人の追憶』、厳寒の中で撮影を敢行した『南極日誌』、大ヒット作『グエムル 韓江の怪物』はもちろん、息子の無実を信じて真犯人を追う母親などは究極のサスペンス。『スノーピアサー』はポン・ジュノが必然的に至った極限のSFと言えるかも知れない。

(安永 五郎)

公式サイト⇒ www.snowpiercer.jp

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