『麦子さんと』
制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 1時間35分 |
監督 | 吉田恵輔(『ばしゃ馬さんとビッグマウス』) |
出演 | 堀北真希、松田龍平、温水洋一、ガダルカナル・タカ、ふせえり、麻生祐未、余貴美子 |
公開日、上映劇場 | 2014年1月4日(土)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー |
~麦子さんと故郷を訪ねる旅は、自信と勇気をもたらしてくれる~
意外と知らない親の過去。自分が生まれる前のことや、特に親が子供の頃については祖父母が健在ならまだしも、わざわざ本人に訊いたりはしないだろう。ましてや、両親が離婚や死別などで一緒に暮らせないと尚更だ。だが、血は争えないもので、自分に似ている点が多いことに驚かされることもある。『麦子さんと』の主人公のように、亡き母の故郷で初めて知る母親像によって自分の中に隠れていた感情が引出され、不安だらけの人生観を軌道修正してくれることもある。それが応援歌となって前向きに生きて行けそうな、そんな勇気がもらえる映画だ。
【STORY】
アニメショップでバイトしながら声優をめざしている麦子(堀北真希)は、いつも「俺はお前のために…」を口癖にしている兄・憲男(松田龍平)と二人暮らし。3年前に父親を亡くし、母親は麦子が幼い頃に家を出ていた。そんな兄妹のもとへ母親(余貴美子)が突然帰ってくる。兄が「ババア」と呼ぶ母の記憶が麦子にはまったく無いのだ。せっせと手料理を作ってくれるが、昔の事情も分からない麦子にとっては赤の他人のようであった。そんな母親が突然病死してしまう。実はガン末期で、せめてひと時でも子供たちと過ごしたいと戻って来たのだった。
兄に押し付けられるように母親の納骨を任された麦子は、母親の故郷である信州を初めて訪れる。遺骨を抱いて降り立った田舎の街では、皆が麦子を見て「彩子ちゃん!?」と訊く。それもそのはず、麦子は母親が若かりし頃にそっくりだったのだ。母・彩子の同級生というタクシー運転手(温水洋一)や旅館の主人夫婦や霊園事務所のミチルさん(麻生祐未)らが、昔を懐かしんで同窓会みたいにして集まってくる。まるでアイドルのような存在だったという意外な母親の過去、そして、優しい大人たちに囲まれて、頑なな麦子の心に何かが芽生えるようになる・・・。
かつて母親が地元ではアイドルだったとは、まるでNHK連ドラ『あまちゃん』の母子のようなお話だが、親の意外な面を知ると自分の中の世界が広がるような気がするのは確か。自分たちを捨てた最低の母親としか思っていなかった麦子が、最後に子供たちと過ごしたいと戻って来た母親の気持ちを思い遣るシーンがいい。それまで素直になれなかった麦子の気持ちを温かく受け止めてくれた母親の同級生たちの優しさに包まれたからだろう。大人の優しさが身に沁みるようだ。
声優目指す女の子らしく声色使って歌って踊るという麦子を演じた堀北真希は、『ALWAYS三丁目の夕日』の「ろくちゃん」以来、素朴な可愛いらしさが活かされ麦子の変化を自然体で表現している。また、兄の憲男を演じた松田龍平の飄々とした風貌がいい。ズルくてちょっと頼りないけど麦子を優しく見守る様子が微笑ましい。麦子に納骨を押し付けたようで、結局は母を知らない麦子に母親を知る機会を作ってくれたのだから。その他、余貴美子や麻生祐未、温水洋一など、麦子の環境を膨らませる名優たちが奏でる協奏曲は、心の安らぎと希望をもたらしてくれる。新しい門出に見るのにふさわしい映画です!
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.mugiko.jp/
(C)「麦子さんと」製作委員会