制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 2時間3分 |
監督 | 塩田明彦 |
出演 | 北川景子、錦戸亮、上地雄輔、斎藤工、國村隼、風吹ジュン |
公開日、上映劇場 | 2014年2月1日(土)~全国東宝系ロードショー |
~障がいがあっても幸せを掴んだ「つかさ」の生きる力~
時には男性相手に啖呵を切りながら、明るく前向きに生きる主人公つかさを見ていると、難病もののラブストーリーという先入観が吹き飛ぶぐらい、ポジティブなエネルギーに包まれる。北海道網走市で交通事故の深刻な後遺症が残る中、愛する青年と家庭を作る夢を諦めなかった女性の実話を『黄泉がえり』の塩田明彦監督が映画化。北川景子と錦戸亮が演じる若い二人の初々しくも切ない姿や、結婚を決意した二人の将来を心配する両親たちの心情がきめ細やかに描かれ、困難を乗り越える姿が心を打つ作品だ。
高校時代の交通事故で、左半身麻痺と記憶障害が残ったつかさ(北川景子)は、車椅子生活ながら親元を離れて一人で生活している頑張り屋。スポーツセンターで出会ったタクシー運転手の雅己(錦戸亮)と恋に落ち、二人は結婚を決意するが、雅己の父(國村隼)は「孫の顔も見られないのか」と激怒し、つかさの母(風吹ジュン)もつかさの壮絶なリハビリの様子を収めたビデオを雅己にみせ、結婚を諦めさせようとするのだった。
雪深い網走の冬、ニット帽とダウンジャケットに身を包んだ車椅子姿のつかさ演じる北川景子がハツラツとした笑顔を見せ、病気と闘っているしんどさを、生きる強さに変えているつかさの生き方が伝わってくる。つかさが所属しているスポーツ(ポッチャ)チームのメンバーには障がい者お笑いコンビの脳性マヒブラザーズが登場し、つかさを交えた障がい者仲間の日常が生き生きと描かれているのにも好感が持てた。そして何よりも二人の強い愛が育まれていくエピソードの数々が微笑ましく、メリーゴーランドでのキスシーンなど、記憶に残る名場面が雪の町網走のロマンチックな愛の実話に彩りを添える。また、つかさが「我爱你(ウォー・アイ・ニー)」と中国語で愛の告白をするシーンは、『狙った恋の落とし方』(中国)の大ヒットで中国観光客が多数訪れた、同作のロケ地北海道ならではのエピソードかと、アジア映画ファンとしては思わず深読みしてしまった。
自分の子の幸せを考える親の姿と、困難を乗り越える姿勢をみせるつかさと雅己の姿から、幸せを掴むため通らなければならない葛藤が映し出される。綺麗ごとではない痛烈な言葉も飛び交うが、それでも負けないのがつかさと雅己の強さだ。皆に祝福されて心温まる結婚式を挙げ、子どもも授かり、幸せ絶頂で訪れた悲劇を強調するのではなく、今つかさの分も生きる雅己や息子、和実(なごみ)に想いを繋いで、新しい希望の物語が紡がれたのだと思う。エンドロールの後映し出されたウェディングドレスに身を包むつかささん本人の姿は幸せに満ち溢れ、その姿を見た時に「真実の物語」なのだと感動を新たにした。
(江口由美)
公式サイト⇒http://www.dakishimetai.jp/
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